Vol.17 1999



「GAMERA 1999」 (庵野秀明監督)

 映画のメイキングといったら、まずクローズ・アップされるのは主演の役者で、そして次にクリエーターとして苦悩する監督の姿というのが普通。なーんてメイキングを観たことも無いのにホラ吹いてるんだが、僕のイメージだとそんな感じだ。そしてそんな考えを真っ向から却下してくれたのが、「ガメラ3」のメイキング「GAMERA 1999」。総監督は庵野秀明、監督は摩砂雪というGAINAXコンビだ。さあさあ、カレカノ最終回の悲劇を忘れさせてくれるんだろうか。

 この「作品及び商品及び宣材」が主に捉え続けるのは、主演の前田愛でもなければ監督の金子修介でもなく、特技監督の樋口真嗣。つまり特撮部分の監督だ。彼とその仲間である特撮班が、毎日苦労を重ね新しい手法を試しながら撮影する場面が大部分を占めている。その様子だけでも充分面白いし、「ラブ&ポップ」同様のやたらに凝ったカメラワークと、時間軸の交錯が多用される編集も気持ちよく、自分はこの人達の映像感覚が好きなんだと再確認した。

 しかし、美少女・前田愛がいるのになんでまたメインが樋口なのか。ビデオ中盤からは、監督である金子と現場との板挟みになって中間管理職のごとく苦しむ樋口、そして疲労感モロ出しで「死んじゃおうかな」を連発するプロデューサーの南里幸という2人の姿が中心となり、終盤はそればっかりに。制作現場での意思疎通がうまくいかない様子が撮り続けられ、しまいには金子が「これ、何のために撮ってるの?」とメイキングに対して苛立ち始める有り様だ。そう、人間関係のこじれを容赦なくあぶり出そうとする庵野監督は、金子と樋口・南里の険悪な関係が一番面白かったんだろう。本来の監督である金子なんてほとんど悪役扱いだし、タチの悪さ全開だ。

 底意地の悪さが次第に前面に押し出されてくる2時間以上のドキュメント。友情・努力・勝利の類は気配すらもなく、疲れ果てて行く男達の姿だけが最後に残る。長過ぎだけど、庵野監督ファン(エヴァファンではなく)は必見。画面にもチラチラ登場する庵野監督は、メイキングを依頼された自分自身が「作品及び商品及び宣材」であることを認識していたのだと思われるけれど、結局メイキングを自分の色に染め上げてしまった。「いいのかよ」ってほどに。

 ガメラの最大の敵は庵野監督だったわけだ。

(MAY/12/98)