Vol.14 1999



広末涼子「RH DEBUT TOUR 1999」 (2月6日 日本武道館)
 視界の色をかき消すほどの光、もはや人のものとは思えぬ音波となって響く歓声。その全ては、ステージ上のただひとりのために。集中力の足りない僕の不意を突いてステージ正面左から現われた18歳は、いかにもコンサート慣れしてない感じで「MajiでKoiする5秒前」を歌い踊り出した。僕が発狂寸前の状態になったからといって、誰が責められることだろう。それに、気が触れてるから責められても意味が理解できないしね!

 「RH DEBUT TOUR 1999」、広末涼子、日本武道館。彼女の初のコンサート。

 同行した友人の40分遅刻、皇居の堀を越えた門に最後尾があったグッズ販売、そしてそして並ぼうとするとどんどん武道館から遠ざかる果てしない入場行列。一番通ってるライヴ会場が渋谷クアトロという僕には全てが過酷すぎた。何もかも予測不可能な事態の連続に開演前からグッタリ、しかしそんな気分も一瞬にして吹き飛び、そしてラリっていく。

 テレビとは違って編集不能、また同じ生広末でも、ミュージカル「銀河の約束」のような配役はない。そんなレアな広末だからこそ分かるのだ、彼女って歌う時に首を前に出すってことが。そう、実は広末って猫背、日本一ラヴリーな猫背。猫背万歳、僕も猫背気味で良かった!

 しかもよく動くんだ、両脇に張り出したステージまで階段を上って駆け上がる、それも何往復も。それは同時に、僕の目の前5メートルほどの場所まで広末が走ってくることを意味していた。しかも1回ならず3・4回も! スポットライトに照らされた髪、そして肩甲骨の美しさに、脳の神経は全面ダウン。ハードディスクがクラッシュする時って、こういう状態なのかもしれない。いや、広末画像を入れるとクラッシュするわけじゃなくて。

 定番通り最初にテンポの早い曲で盛り上げて、それから「風のプリズム」「プライベイト」と聴かせる歌へ。 「プライベイト」ではステージ後方のスクリーンに歌詞が映し出され、この曲を広末史上(短い)屈指の名曲と考える僕としては喜ばしい限りだった。これで「いろいろ葛藤はあるんだけど」の歌い出しの部分でしっかり声が裏返っていれば文句無しだったけど、生で聴けただけでももうオッケーだ。声もよく出るようになったと感心。

 「聴くだけじゃなくて参加して欲しいんです、歌って下さい!」と客に練習させたりすると、内心でちょっと醒めた気分になったりするのも事実。で、俺は彼女のどこが好きなんだろう…なんてことが頭をよぎったりもしたけど、すぐに中断することにした。広末を目の前にしてる間は、思考停止の快感を満喫するのが最良の選択なのだから、絶対に。だってさぁ、広末なんだよ!(理論無限循環)

 本編は1時間という予想外の短さだったけど、アンコール3曲&長めのMCで、終わってみるとかなり満足感があった。自分を剥き出しにした広末のMCが効いたね。彼女はエゴを表に出すぐらいでちょうどいいキャラだと再確認。類稀な強運をもって生まれた彼女は、ファンに合わせるよりも、ファンを自分に引きつけることを考えればいい。危なげなまでの素直さで、ファンと、そして世間と対峙すればいい。強固な意志と微妙な不安定さが見え隠れするのも彼女の魅力なのだから、完璧さなんて今の彼女には不要なのだ。

 そんなわけで、会場では広末と観衆のエネルギーが激しいテンションで乱れ飛び。本当に憑かれた、いや、疲れた。

(FEB/23/99)