Vol.13 1998



宅配青酸自殺報道とそれに苛立つ自分と
 宅配便で届いた青酸を飲んで、24歳の女性が自殺したとか。98年12月25日付けの朝日新聞は、この事件に絡めて「自殺情報溢れる」と社会面でインターネットについて大きく報じ、「Digital 青少年少女自殺相談所」や「首吊りの家」といったページを名前を挙げて紹介していた。もちろん、公開している以上はホームページ側もこうした形で紹介されることを覚悟する必要もあるかもしれない。が、自分たちが非道徳的と考える情報を権威で押し潰そうとしているのではないかと、朝日の意図を勘ぐってしまったのも事実だ。すぐに思い出したのが、朝日の関与が噂された、例の酒鬼薔薇顔写真をめぐるネット上の攻防だったのだから。

 だいたい、「Digital 青少年少女自殺相談所」は「青少年自殺相談所」と名前を間違えられているし、無断リンクを断っている「首吊りの家」はリンクどころか全国紙で紹介されてしまった。血も涙も無いね。NHKの午後7時のニュースで、「The Complete Manual of Suicide」が画面に映されたのには驚いたけど、「自殺について、真剣に話しあえる場所」もフジのニュースで取り上げられたとか。事件に関係しているかすら明確になっていないページを勝手に取り上げる姿勢に、しょせん素人相手だと見くびっているマスコミの奢りを感じ取るのは即断に過ぎないのだろうか。

 しかしその一方で、マスコミによるネットについての否定的な報道を目にすると、過剰にネット側に肩入れしようとする自分自身にも気づく。自分たちの空間、ひいては共同体を否定されているという被害者意識が働いているのかもしれないし、それが冷静な論議を妨げる可能性があるという点では自戒する必要があるだろう。ネットも社会の一部であるという原則は、無粋だけど事実だ。ネット上で自殺も可能な薬物が売買されているとしたら、それを買った側が他殺に使う可能性もあるわけで、そうした危険性は指摘されるべきだろうし。しかし、自殺関連の情報をホームページで流すことが自殺幇助に直結するのかという問題が顧みられてさえいなかったり、そもそも自殺というテーマを扱っているだけで他のページまで一概に語られてしまったりする現状を危惧しない方が難しいのもまた事実だ。

 僕は自殺志願の人々に多少なりともシンパシーを感じているのだろう。それは全面的肯定ではないにせよ、彼らが異端のように扱われることにも納得できないのだ。彼らが自身について言及している限りは犯罪ではなし、それによって社会性を維持している場合もあるだろうに。そして鶴見済のコメントを聞きたいのだけれど、恐らく彼が何も発言しないことも分かっている。こんな世間の騒ぎ、鶴見済はウザくて仕方ないだろう。もう踊ることに夢中で、こんな事件に全然興味が無かったりして。

 ひとりで勝手に疲れた気分になったんで、とりあえず読んだのが桜玉吉の「幽玄漫玉日記」第1巻。そうかぁ、桜玉吉も鬱病だったんだ。でも彼のマンガは思い切り笑わせてくれた。

(JAN/25/99)