Vol.12 1998



追憶の鎌倉シネマワールド
 散りゆくものの最後の姿を目に焼き付けるべく、12月で閉鎖となる鎌倉シネマワールドを我々が訪れたのは11月28日。朝10時に横浜三越前に集合し、「今日どこ行くの?」とか「結局シネマワールドってどこにあるの?」とか愉快な言葉が飛び交う中、見切り発車で出発となった。

 大船駅から徒歩約10分で目的地に着くと、客は家族連れと老人ばかり。もうちょっとカップルでも来ればここも生き長らえたのかもしれないけれど、どっちにしろ野郎6人で来てる僕らは浮く運命だ。まず2階から入場すると、「アメリカンシネマゾーン」と題されたそこは、安っぽいネオンが僕の力を吸い取ってくれる。そこではなぜか漫才ショーもやっていて、枡野さんお勧めのバカリズムというコンビを観たけれど、勧めた枡野さんを恨んでしまいそうな内容だったので、とりぜず仮眠。3階の「フューチャーゾーン」は広いものの何があるのかよく分からず、屋上の「キッズランド」はさびれたデパートの遊園地といった風情だった。あまりにも青い空の下、皆で巨大なチーズに座ってジュースを飲んでいると、ここが潰れる理由も分かるような気がしてきた。

 でも、1階の「日本映画ゾーン」はかなりいい感じだ。お楽しみの寅さんワールドに、小津安二郎の展示、屋外の時代劇セットなど、素直に楽しめる見所がたくさん。維持費も掛かるんだから、この1階だけにしておけば良かったのに。あと、内容が躁鬱気味というか、力が入っていたりいなかったりが妙に極端なのも目立ったな。

 ちなみに、野外会場のはずれに、吹きさらしにされてカーテンの色も落ちた舞台があった。そこに枡野さんと梅本さんが勝手に登って話していたら、なんと客が集まって来るじゃないの。しかもオバさんのひとりが、「アンタたち何で食ってるの?」とか勘違いで容赦の無い質問を投げかけてくる。鎌倉シネマワールドで一番笑ったそんな場面は、隙だらけの空間が生み出す誤解と出会いの産物だった。

(JAN/08/99)