Vol.11 1998



ミュージカル「銀河の約束」 (10月24日 東京芸術劇場)
 至福の時間は150分に及んだ。生まれて初めてアイドルにハマってから2年半、遂に広末涼子を生で見る日が来たのだ。場所は池袋の東京芸術劇場、ミュージカル「銀河の約束」昼の部公演。共演は、中村雅俊・森公美子・谷啓・河相我聞など豪華キャストだった。

 舞台には本物の広末がいる。それだけで、もう細かい理屈を練る余裕はなんてない。彼女の登場シーンではその事実を確かめるように、会場で売られていたオペラグラス(広末マーク入り・1000円)を常に装着して一挙一動一表情を激視、広末を焼き殺さんばかりの熱視線で鑑賞だ。

 宇宙人一家が、大スター歌手中村雅俊(役名は忘れた、以下同)の家の近所に着陸。その宇宙人一家の一人娘・広末は、中村に恋をしたり、友達になった河相我聞が病死する姿を目にして苦しんだりしながら、飛躍した論理で月に突撃することを決意する(太陽に突撃した鉄腕アトムのようですな)。そこで中村が「俺に世界を救う歌を歌わせてくれ!」と叫んでフィナーレを迎えるという、歌と踊りと笑いと感動、そして強引さまで揃った一大スペクタクル・ロマンだ。この説明に納得が行かない向きもあるだろうが、とにかく実際に観てもこうなので、納得していただくようご協力を願いたい。

 この作品のミュージカルとしての評価はどうなのか? そんな問いは愚問だ。ミュージカルのわりにはあまり踊らないという事実も、大した問題ではない。金さえ出せば生の広末が見られる、しかも日時の融通まできくという時点で、このミュージカルはその存在を120%肯定されるべきものなのだから。ちなみに、谷啓の生ガチョーンも観れるので、広末なぞ知らない年輩の人にも自慢できそう。

 宇宙人ルックで宇宙人イントネーションで話す広末、阪神のユニフォームでタンバリンを叩きながら歌い踊る広末、学生運動の格好で「安保ふんさ〜い」と叫びながら飛ぶ広末、忍者姿でメチャクチャな忍者言葉を話す広末、そして白いワンピースで走る広末…。「なんだよ、ゲテモノかよ?」。そんなことを言いたくなるあなたも、実際に生広末を観たならば、全てを銀河の真理として肯定したくなること必至だ。しかも悩み苦しみ、切なげな表情を見せる場面が多いので、もう我慢がならない。いつのまにか歌も上手くなっているので、ラストの方で広末がアカペラで歌い出した時などは、展開の無茶さ加減も忘れて感動してしまった。騙されてるなぁ、俺。

 生広末の前で、全ての理性を投げ捨てる。それが正しい鑑賞法だ。そう、彼女のプライベートもひとつの現実だけれど、アイドル・広末涼子という虚構の存在もまたひとつの真理であり、両者は等価値なのだ。僕らの全ての幻想に花束を!!

 閉演後、会場では広末ファンクラブが入会受付をしていた。「今なら、来年初旬のコンサートの優先予約に間に合いま〜す」。こんなことを言われては、申し込む姿を衆人環視に晒されるとしても、入会手続きを済ませずにはいられない。そしてそれは、これまでファンクラブには入らないことで一線を保っていた自分への決別でもあった。

 そんなわけで僕は旅立ちます。皆さん、さようなら!

(NOV/02/98)