Vol.4 1998



「HANA-BI」 (北野武監督)
 「北野作品は暴力的」という先入観を逆手にとったように暴力で始まり、その緊張感が最後まで続く。なのに、同じように暴力・殺人描写の連続だった「ソナチネ」よりも優しく穏やかで、そして残酷な作品だ。

 観ている最中に何度も感心してしまったのは、構成/編集の巧みさだ。連続殺人犯に同僚が殺される場面を少しずつ挿入していったり、下半身不随になって絵を描きはじめる同僚の姿を物語の本筋とシンクロさせたりする構成は見事。北野武による絵が病院や喫茶店、ヤクザの事務所にまで飾られていたりするのはやりすぎの感もしたし、同僚の家庭や浜辺で凧上げをする少女の描写には、幸福やイノセンスといったものが記号的に表現され過ぎているきらいもある。それでも叙情とユーモアと暴力の溶け合い具合は素晴らしく、クライマックスでの盛り上がりやカタルシスとは無縁のこの物語を紡ぎあげることに成功していた。元刑事が銀行強盗をするような荒唐無稽な展開があっても、観終わった後には静謐な印象だけが残る。

 ところでこの映画のラスト、公開前後の「週刊文春」で北野武自らが語っていた。それと知らずに読んでしまったので、劇場で観ても衝撃が薄くなってしまったのは残念。エヴァの完結編の時のように事前に展開を知っていても楽しめるのが優れた作品の条件だと思うのだが、やはり自分でネタばらしは勘弁して欲しかった。ラストがこの映画の命なんだから。

(MAR/27/98)