Vol.2 1997



「絶対運命黙示録 少女革命ウテナ」 (テレビ東京系 毎週水曜午後6時)
 エヴァ熱も冷めた頃、せっかく7年ぶりにアニメを見るようになったこともあって、今放送しているアニメをチェックしてみたことがあった。しかし、話題になっていた「ナデシコ」はもう終わっていたし、「こどものおもちゃ」も20代半ばの僕には少々辛い物があった。

 ところが、1本だけ得体のしれない作品があったのだ。抽象的で不可解なイメージの連続や、憎しみや錯乱などの異常に緊迫した心理描写など、「ウテナ」は収拾がつかないほどコアな感覚に満ちていた。しかも同性愛や近親相姦までが描かれていて、とても夕方6時にやってる子供向けアニメとは思えないシロモノだ。毎回途中で影絵が始まるというオマケまである。

 ストーリーは、奇跡の力を持つとされる「薔薇の花嫁」姫宮アンシーとひょんなことからエンゲージした天上ウテナが、アンシーをめぐって決闘を繰り返す学園モノ。大時代的な少女マンガのような設定だが、確信犯の荒唐無稽さだ。陳腐な要素を組み合わせながら、それを逆手にとって意表を突いていく展開はなかなか見事だ。

 なかでも特筆すべきなのは卓越した演出で、僕がこの作品にすっかり魅了されてしまった原因もここにある。編集のリズム感も良く、画面を止められる場面では徹底的にセルを節約し、決闘シーンなどで一気にキャラを動かせるという極端なメリハリも気持ちいい。

 決闘やエンディングで流れる音楽を担当しているのはJ.A.シーザー。寺山修司の劇団「天井桟敷」で音楽を担当していたミュージシャンだ。CD化される以前は、彼の旧譜は中古盤市場で高値を呼んでいたらしい。ウテナで使われている音楽も、漢字の多い独特の歌詞とハードロック歌劇とでもいうべき曲調で、かなりハジけた世界だ。こんな音楽を違和感なく吸収してしまうのも、この作品の懐の深さの現われだろう。

 監督の幾原邦彦は、「セーラームーン」の劇場版の監督を務めた人物だそうだ。テーマという点ではエヴァほどの魅力はないけれど、作家性を全開にしてこんな表現を追究する作品があることには、素直に驚かされた。

 物語はすでに佳境に突入しているらしく、各キャラを縛る過去のトラウマが次々と描き出され、とことんヘヴィーな展開となっている。かくして僕は、「不思議の海のナディア」以来7年ぶりに毎週アニメを見ているのである。この作品は、ちゃんとした終局を期待できそうだしね。

(NOV/09/97)