LIVE REPORT Vol.6



佐野元春 (99年10月19日 神奈川県民ホール)
 ずっと聴いていながらライヴは観たことがないアーティストが僕にはけっこういて、「カフェ・ボヘミア」以来13年アルバムを買いつづけてきた佐野元春もそのひとりだった。去年「カントリーロックの逆襲'98」で数曲歌ったのには立ち会っていたけれど、初めて観る単独公演は「STONES and EGGS TOUR '99」のファイナルである神奈川県民ホールで。

 一言で表現するなら「ロック・ショウ」。大規模なホール・クラスのライヴって僕はあまり観たことがないので、歌も演奏もPAも舞台装置も照明も高い水準で安定したライヴにちょっと衝撃すら受けたほどだ。でもその分スリルがないなぁ…とスタートして間もなく考えたが、それも「99 BLUES」を本当にブルーズにアレンジした演奏に吹き飛ばされてしまった。バックを固める小田原豊・井上富雄・佐橋佳幸・KYONは、アコースティック編成での演奏時にも綻びを見せないさすがのプレイ。

 そして主役たる佐野元春がまたすごい。「コンプリケイション・シェイクダウン」でラップする姿は、アルバムにも参加したドラゴン・アッシュの影響を受けてしまっているのではないかと懸念するのに充分だ。「GO 4」では「マイク・チェック!」と繰り返していたし。また、「悲しきRadio」の途中で静かになる部分の語りとアクションは、ロケンロールに身を捧げた人間ならではの確信に満ちていた。たとえそれが冷静に見ると滑稽であったとしても、ああいう場では逆に絶大な威力を発するわけだ。

 「約束の橋」「SOMEDAY」などの代表曲を初期から現在まで網羅し、出し惜しみ無しのステージ。完成されていた。あの場で提供されたのは音楽と興奮と一体感で、どうも場の雰囲気が後の2つに偏ってる気がして2度目のアンコールはやや冷めたけれど。また、30歳以上の会社員風が多い客層が、あれだけロックのビートを欲しているのにも驚いた。そうした光景が、ある種の安定を前提とした熱狂への違和感を僕にもたらしたのも事実。けれどそんな青臭い靄が僕の中に生まれてしまったのも、ライヴの圧倒的な完成度ゆえだろう。

(NOV/01/99)



Brian Wilson (99年7月12日 東京国際フォーラム ホールA)
 東京国際フォーラムに集まった客層は、長年Brianを待ちわびていたと思われるマニア層と、近年「PET SOUNDS」辺りから入ったと思われる若者層とに大別可能。もちろんThe Beach Boysのヒット曲を知っている程度の人も多くいたんだろうが、S席が8500円では集まる人種も気合が入っていて、僕の隣に座っていた西新宿ブート界隈系の人々は、いきなり怪しげなMDを交換していた。恐るべし。

 まずはBrianのキャリアをまとめたビデオが上映され、客をじらしたところで本人が登場してライヴはスタート。正直言ってヘロヘロなんじゃないかと予想してたんだが、現れたBrianは意外なほど元気だった。彼の歌は、やはり音程やリズムが危うい部分もあったけど、そんなことは大した問題じゃない。1曲ごとに「アリガト!」と繰り返し、スタジオでのプロデューサーのごとく客に立てだの座れだの指示し、終盤ではなんと立って踊りながら歌い出したんだから。

 バックのミュージシャンもしっかりBrianをサポート。そして彼の歌うメロディーは、眉間からエンドルフィンが噴き出しそうな気持ち良さだった。生で聴く「PET SOUNDS」には胸が震えたし、Brianの声は本調子じゃなかったものの「CAROLINE,NO」はやはり美しく、2度目のアンコールでの「LOVE AND MERCY」には感動するなと言う方が無理だ。

 つい昔の彼と比べてしまいそうになったけど、それは酷というものだろう。あんなに客の拍手や声援の大きなライヴは初めてだった気もするし、アンコールを求める拍手もえらい熱さ。The Beach Boysの代表曲やソロの曲、カバーをとりまぜた選曲も良かったし、あの場にいられて良かったと本当に思う。

(JUL/19/99)



Van Dyke Parks (99年6月24日 六本木スイートベイジル139)
 洒落まくってるライヴハウス・スイートベイジルでの彼の公演は、実に22日から27日まで続いて、しかも1日2ステージの日もあった。ジャニーズのタレントみたいですな。僕が観たのは、その夜2度目のステージ、開演は夜の9時半。隣のテーブルを見るとヒックルヴィル御一行様、振り返って細野晴臣がいれば、はっぴいえんどがVan Dyke Parksと共演した「さよならアメリカさよならニッポン」が頭の中で鳴り出してしまうというもの。

 そして蝶ネクタイにガッツポーズでおどけながら現れた男・それがVan Dyke Parks。あの「Song Cycle」を作った…なんて伝説じみたセリフを忘れさせてしまうぐらいの茶目っ気だ。

 緩急自在にピアノを弾き、滑り込ませるアドリブはスリリング、そしてどれも瑞々しい音ばかり。昨年発売されたライヴ盤「Moonlighting」のようにオーケストラがバックとはいかず、ギターとベースのみだったけれどが、それでも歌の世界の広がりは劣らない。彼のボーカルは特別上手いとはいえないものの、跳ね上がらんばかりに全身でリズムをとりながらピアノを弾く姿と併せて聴くと、自分の内に沸き上がる音楽をそのままに表現できるミュージシャンなのだと伝わってきた。

 「Orange Crate Art」の曲も多く披露してくれて、Brian Wilsonの名を出したかと思うと「Nervous!」と連呼。うわぁ。

 終演後には客席に降りて握手してまわり、僕も握手してもらってしまった。Van Dyke Parksは、最後までサービス精神いっぱいのエンターテイナーでもあったのだ。

(JUL/12/99)



カーネーション (99年4月2日 リキッドルーム)
 新宿の通りに群がる新社会人たちを掻き分けて、たどり着いたのはリキッドルーム。カーネーションの「Parakeet & Ghost」ツアーは、その夜が最終公演だった。

 僕が好きなバンドの中では最も「ロック」な感じのバンドだけあって、客を乗せるのはさすがに上手いんだけど、一方でアルバムに入っていたラウンジ〜音響派っぽいインストも次々と披露。他の客にどのくらい受けるのか知らないけど、バンドの多面性を見せるこの試みは僕にはかなり面白い。雑多な要素がブチ込まれたアルバム「Parakeet & Ghost」のツアーだけあって、ライヴでも同じバンドかと思うほど雰囲気が変わる場面もあったし、「Young Wise Men」や「地球はまわる」といった所期の代表曲の別アレンジもあり、しかも本編だけで2時間以上の長丁場。アンコールでは、直枝&大田コンビだけでの「Strange Days」が最高だった。弾き語りヴァージョンのこの曲は大好き。「ヘヴン」ではステージを観てると光と音を浴びてる感じで、こういう感覚を味わえるのはライヴならではだろう。ちなみに女友達は泣きそうになったそうだ。アンコールは実に3回あって、最後はプロデューサーの上田ケンジと、加藤いづみも登場。初めて生で聴く加藤いづみは、細かいコブシのまわし方が新鮮だ。

 長さゆえに構成には一工夫欲しかったけど、もうお腹一杯の2時間40分だった。

(APR/26/99)



「BB★C Presents PINK Christmas Night!」 (98年12月22日 渋谷クラブクアトロ)
 歌うはブレッド&バター、そしてそのバッキングをカーネーションが務めるという「BB★C」発売記念のライヴ。会場の前と後で、20代前後のカーネーション・ファンと40歳以上のブレバタ・ファンに客層がはっきり別れているという珍しい状況が見られたのもこのイベントならではだった。

 前半はブレバタ中心で、スティールギターの尾崎孝を交え、クリスマスソングをなどを演奏。相変わらず歌はめちゃくちゃ上手い。この人達はクリスマスの時期になるとよくハワイに行くそうなんだけど、確かにそういう生活をしてないと生まれてこない音楽だよな。途中からベティーブーカ・フロム・ハワイや棚谷祐一もウクレレ片手に加わって、和気あいあいとしたステージ。言わなきゃ客には分かんないのに、来るはずだったテリー伊藤が来なかったとか教えてしまうのにも人の良さが出ていた。

 そして後半はブレバタ&カーネーション。単体だと都会的な洒落たポップスっていう感じのブレバタが、カーネーションの肉感的な演奏と一緒になるとガラッと雰囲気が変わってしまう。驚くべきは、そうした演奏と見事に拮抗するボーカルのエネルギーだ。こんなにタメ張るってのは、よほどの実力がないと無理だろう。共演で聴くと、共作曲も部分によっては完全にカーネーションだったりすることに気付いたりもして、この顔合わせの面白さをCD以上に満喫。

(JAN/08/99)