LIVE REPORT Vol.4



THE SUZUKI meets 栗コーダーカルテット (98年10月14日 渋谷クアトロ)
 この組み合わせでのライヴは、昨年10月18日の川崎市民ミュージアムに続いて2回目で、今回もまず栗Qのステージ、次いでTHE SUZUKIと栗Qのセッションと続いた。

 8月のライヴを見逃したので、栗Qのライヴを観るのは久しぶり。今日は「歩く人」「サニーデイ」など初めて聴く曲が多くて、特に前記2曲では、フリーな演奏のスリリングさが痛快だった。フリージャズや現代音楽も連想したけれど、それらを吸い込んだ栗Qの個性って感じだ。「アリラン」を演奏したのには驚いたけれど、ビンテージものだというリコーダーを使っての演奏には、東アジア的な哀愁に満ちていて、思わずグッときてしまった。タイトル通り幸福感に溢れたメロディーの「うれしい知らせ」などもあり、栗Qの音楽の情感のただでさえ広い幅が更に広がった印象を受けた。40分ほどのステージだったけど、満足感は大きい。

 前半で演奏能力の高さを感じさせた栗Qは、続くTHE SUZUKIとのステージでは、異様に多い音楽的引き出しを武器にして、アレンジ能力を見せることになる。昨年の共演時に披露された曲・アレンジも多かったけれど、最初がムーンライダーズの「BTOF」ってのには意表を突かれた。この曲も栗Qとの相性が良かったし、「黒のシェパード」の盛り上がりも素晴らしかった。「Tracker」の間奏で、バンジョーからサックスへ続く展開も、このセッションならではの面白さ。

 昨年のライヴに比べるとややロック寄りだった気がするけれど、シンプルで泥臭いロックを身の上とするTHE SUZUKIと、非ロック的価値観をもって音楽求道者的な姿勢を見せる栗Qとの共演は、やはり圧倒的な音楽性の豊かさで僕を酔わせてくれた。

(NOV/02/98)



「カントリーロックの逆襲'98」 (98年9月25日 渋谷クアトロ)
 カントリーロックという音楽には全く疎いんだけど、豪華極まりないメンツが登場するっていうので会場へ。司会進行は萩原健太で、カバーを中心に実に3時間以上ものライブとなった。

 まずはこのイベントのために編成されたCTRというバンドが登場し、続いてHOBO KING BANDが各メンバーがボーカルを取る形で演奏。そしてゲストを迎えての共演となり、最初に出てきたのは鈴木祥子。細い身体に見事なボーカル、惚れるかと思った。センチメンタル・シティー・ロマンスの中野督夫は、よくしゃべるし、カントリーロックの曲の合間に「銀座カンカン娘」とか混ぜる、芸達者で愉快なオジサン。渋い曲で攻めた直枝政太郎は、裏声の使い方がたまらなく良かった。

 そしてHOBO KING BANDが仕切った前半の最後に登場したのが佐野元春。もう観客が大騒ぎで、元春ファンが一番多いらしいことにこの時点で気付く。そして佐野元春、「今日起きたら一杯青空で、僕は久しぶりに光合成した」(大意)ですって。素晴らしい。佐野元春の歌とオーラを満喫。

 後半はLAST SHOWが中心。現われたTHE SUZUKIは、兄弟揃ってカントリー&ウエスタンな格好だ。ムーンライダーズのライヴの時は宇宙服だったし、コスプレづいてきたのだろうか。彼らは本編のトリとしても登場して、なんと「髭とルージュとバルコニー」をやってくれた。細野晴臣とコシミハルによるSWING SLOWの時には、もう感激。だって、目の前10メートルのところで、細野晴臣がギター抱えて歌ってるんだぜ。コシミハルなんて、動く彼女を見ること自体が初めてだった。元々カントリーの人だったというLe Coupleは、彼らのヒット曲よりも伸び伸びとしてていい感じ。南こうせつは、CCRの「雨を見たかい」を観客に歌わせるし、迷惑なほどハイテンションだった。

 アンコールではかまやつひろしが歌い、最後には全員がステージに登場。本当にすごい光景だった。細野晴臣と南こうせつが同じマイクで歌うのなんて2度と見られないぞ。細野晴臣と佐野元春をあんな近くでは見られる機会も、もうないだろうしね。

 僕はアメリカン・ロックに特に思い入れが無い人間なんだけど、それでも理屈抜きで楽しかった。見知らぬ音楽との出会いの場に感謝。

(NOV/02/98)



カーネーション (98年9月21日 渋谷クアトロ)
 会場で知り合いたちから聞いたところによると、初日のライヴには島倉千代子がゲストで登場したというじゃないか。マジかよー、来りゃよかった。ともあれ、最前列に向かう友人たちを見送って、僕は会場後方でゆっくりと見ることに。

 そして登場した無骨なるロマンチスト・バンドは、相変わらずハードにしてしなやかサウンド。中でも耳を引いたのは、曲間を繋ぐ形で演奏された2曲のインストだ。片や爬虫類を連想してしまうほど粘り気のあるグルーヴに溢れ、片や穏やかにしてエレクトロ。直枝政太郎はMCで、カーネーションを「情報量の多いバンド」と語っていたけれど、それも納得させられるアレンジと演奏だった。また、「エレキング」や「天国と地獄」の頃と現在とではサウンドの方向性が大きく異なるのも、実は音楽的な情報の処理の手法の違いに過ぎないのかもしれないとも考えた。

 今日聴けて嬉しかったのは、「天国と地獄」からの曲。アンコールには、ブレッド&バターの片割れや、Buffalo Daughterの大野由美子・青山陽一 ・ヒックスヴィルの男子組が登場して盛り上げる。特に「愛のさざなみ」から「夜の煙突」にかけての客席前方の盛り上がりは、後ろから見てると、そりゃもう凄かった。

(NOV/02/98)



「Folk and Poetry Reading」 (98年9月15日 オージャス )
 その名の通り、詩の朗読と歌によるイベント。会場の店は大人な感じの洒落たバーで、そこに客が満員御礼状態だった。

 この日出演したさいとうみわこの場合は、詩の朗読といっても無音の中でするのではなくて、夏秋冬春(テープ&ドラム)・明石隼汰(ピアノ)によるサウンドがバックに流れるスタイルだ。詩によって、編集されたテープが流されたり、音楽の演奏だったりするし、朗読自体もリズムを意識したりしなかったりする。

 初めて聞く詩が多いってのも、語りたいことを真っ先に語るポエム・リーディングらしかったが、中でも「Baby」という詩では、途中で演奏がフリージャズのようになる展開も見せた。CD「Charlie」でもそうだったんだけど、彼らのサウンド作りは詩のテーマをダイレクトに浮き立たせる。言葉が歌になる以前の、言葉と音の出会いを表現するという、普通に歌を作る以上に大変ではないかと思われる表現に挑む姿が印象的だった。

(NOV/02/98)



「寿町フリーコンサート」 (98年8月13日 横浜寿町職業安定所前広場)
 蒸し暑いうえに夕立まで降り出すという天候の中会場へ行くと、そこには今まで僕が見て来たライヴやイベントの雰囲気とは違った独特の空間が待っていた。いかにもソウルフラワーのファンといった感じの若い衆も多いけど、半分くらいは労務者風のオヤジ。なにせ会場は職業安定所の広場だし、ホントに寿町という町のお祭りって感じなのだ。

 しかも大熊亘率いるシカラムータが演奏を始めると、「吾妻八景」でもうノリノリときた。変拍子やスピードの変化が多いシカラムータの演奏でも、かまわず盛り上がる。しかもシカラムータはちゃんと客を乗せる手法を心得ている感じで、関島岳郎はコブシ振り上げて客を煽るし、坂本弘道は相変わらずチェロから火花を飛ばす。そんな真似をしつつも、実は演奏はバッチリなんだからすごいよなぁ。音楽性と肉体感を持ち合わせたグループなんだと思い知らされた。キャリアは伊達じゃない。

 そして次のソウルフラワーモノノケサミットで客は爆発だ。今日のソウルフラワーは、シカラムータのメンバーを始め、サポート多数追加という編成。中川敬が調弦してるだけでもう騒いでる。演奏が始まれば、「がんばろう」でも「インターナショナル」でも、トチ狂ったように踊り狂い、もう俺も汗ダラダラ。体感温度は40度を軽く超えてたね。他のバンドではコブシを突き上げるような真似は絶対しないけど、今日はやっちまった。「島育ち」や「お富みさん」なんて年配層向けの選曲でも、ちゃんと若者も楽しめる。ステージでも、中川や伊丹英子は客あしらいが上手いんだよな。老若男女、イラン系も白人も踊ってて、場が生み出す力ってものを痛感した。

 それにしても、ヒートアップすると上からビールが降ってくるし(降ってくると思ったよ!)、酔ったジジイとかがステージに上がろうとするし(上がるだろうと思ったよ!)、日頃見てるライヴでが去勢されてるように感じるほどワイルドな空間だった。俺は「自由」の名の下に調子に乗る馬鹿どもが大嫌いだが、今日だけは許してやろう。馬鹿みたいに面白かったから。いやー、腹の底から笑った笑った。

(AUG/24/98)