LIVE REPORT Vol.3



ムーンライダーズ (98年7月24・25日 赤坂ブリッツ)
 正直言って、ムーンライダーズの新作「月面讃歌」に、僕は讃歌を歌えなかった。若手とのコラボレーション云々って言うわりには、保守的でサエないサウンドが多くて(もちろん全部とは言わない)、せっかくの曲の良さまで殺されてるような気がしたからだ。繰り返し聴いて、それなりに楽しんでもいるんだけど。

 そんな複雑な気分を抱えて観た赤坂ブリッツでの2DAYSだったが、こちらには落胆するどころか感動してしまった。いきなり全員宇宙服を着て出てきて、テクノ・アレンジの「気球と通信」で踊るんだぜ。もう最高じゃないか。宇宙服脱衣後には、アルバムでのD.M.B.Q.の演奏にタメ張るように、「月曜の朝には終わるとるに足りない夢」を熱演。「月面讃歌」では毒にも薬にもならないようなミックスがされていた「海辺のベンチ、鳥と夕陽」も、ライダーズの演奏そのままの方がずっと良かった。インチキおフランスなアレンジで披露された「9月の海はクラゲの海」も新鮮。アンコール2回目の「夢が見れる機械が欲しい」で武川雅寛のヴァイオリン・ソロが始まる瞬間は鳥肌モノだった。

 そんなわけで、躍動感と繊細さと深みと馬鹿馬鹿しさが、なにもそこまでってくらいに展開されていて、オヤジ連中があんな真似をしてることがえらく痛快だった。年寄りの冷や水っていうよりも、周囲に冷や水ぶっかけてはしゃぐ年寄りって感じ。4月のパワステライヴのおいしいところを保ちつつ、さらに駒を前に進めてる姿はやっぱり感動的だった。

 ところで25日には3回目のアンコールがあった。6人のメンバーが客席に降りて、各自好みの(?)女の子を連れてステージに上がり、その子を相手に「Dancing in the moonlight」を踊るって趣向だ。で、最後にはメンバーも去って、女の子が1人だけ取り残されちゃったんだな。ひで〜。かわいそ〜。客もあんなので喜ぶなっつーの。でもまぁ、この辺のツメの甘さというか、中途半端さがまたライダーズらしいのかもしんないけどさ。

 でもやっぱ、ライダーズのファンが「ムーンライダーズのすることなら何でもOK!」って感じの、共同体的な色彩を帯びると、僕は途端に居心地の悪さを感じちゃうんだよな。「スカーレットの誓い」でコブシ振りあげるのとかも僕は引いちゃうし。しかもライヴのたびにその度合いが高まってる気がする。ちょいその辺が引っ掛かったのは、僕が比較的若いファンだからかもしんないけど。上手く言えないんだけど、ライダーズのファンの間の一種共同体的な雰囲気が強まることに、漠然とした不安を感じているのは僕だけなんだろうか? 

(AUG/24/98)



鈴木博文・武川雅寛 (98年6月8日 渋谷クラブクアトロ)
 メトロトロン3DAYSの最終日は、鈴木博文&武川雅寛のライヴ。ちょっと不思議な取り合わせによる今回のライヴは、彼らがムーンライダーズ用に書いた曲や、ソロアルバムの曲を披露するというものものだった。先週の濱田理恵ライヴのメンバーに鈴木博文を加えただけということもあり、演奏はとても安定していた。

 こうして聴いて改めて感じるのは、2人ともボーカルは不安定なようで安定しているし、すごく味わいがあるということ。アレンジと演奏は歌の魅力を引き出していて、鈴木博文のソロアルバム「SINGS MOONRIDERS」の感触と近いものを感じた。武川雅寛のソロアルバム「くじらのハート」の曲も、初めて生で聴くことができた。

 中盤では、綿内克幸&鳥羽修(カーネーション)が3曲を披露。続く後半では、博文&武川の2人だけでやるパートもあった。ライダーズの曲もガンガンやり、来月に出る新作の曲までやるなど、出し惜しみなしって感じだ。多少のミスもOKって雰囲気で、非常にアットホームなライヴだった。

(JUN/30/98)



濱田理恵 (98年6月2日 渋谷クラブクアトロ)
 メトロトロン3DAYSの2日目は濱田理恵のライヴ。配布されたパンフのインタビューは僕が担当させてもらったもので、入場して場所を確保したお客さんたちが一斉にパンフを読みはじめる光景には、嬉しいやら恥ずかしいやらだった。アニメの音楽の仕事もしてる人なので、そちら方面のファンも多い感じだったが、皆さん満足していただけたろうか。

 去年のメトロトロンワークスでも披露された「セカンドクライ」でスタートしたが、武川雅寛のトランペットで始まる気だるいムードのアレンジに驚かされる。西村哲也・大田譲・夏秋冬春らによるバックは、緩急強弱自在に歌の世界を繰り広げる彼女をしっかりサポート。ヒートアップしてもほつれることのないタイトな演奏と、甘い中にも毒を含んだ濱田理恵の歌声が激しく拮抗し、ピアノ1台で歌う時とは違った緊張感に満ちたステージだった。ゲストの高野寛は、まずギターの弾き語りで2曲を披露し、全員とさらに2曲を演奏。彼のステージは初めて見たのだが、初期のように歌が前面に出ていながら深みを増した印象だった。終盤では矢口博康も登場して、フリージャズ的な要素も多い彼女の音楽に色彩を加えていた。

(JUN/06/98)



青山陽一 (98年6月1日 渋谷クラブクアトロ)
 渋谷クアトロでのメトロトロン3DAYS、初日の今日は青山陽一のライヴ。開場時間を間違えて早く会場に着いたことも合って、椅子席に座れてしまった。クアトロで座って見るなんて、90年のあがた森魚&雷蔵ライヴ以来8年ぶりかも。で、前のその席はスピーカの音が直撃、特に青木孝明のベースの音が凄くて、床から椅子まで震動が伝わってくるほど。背もたれの当たる場所を工夫すれば、体の凝りも解消してしまいそうだった。別に凝ってないんだけど。

 バックのThe BLUEMOUNTAINSのうち、今日はサックス&パーカッションの川口義之が欠席で、その分ギターが前に出た感じのサウンドだった。ストイックなようで、幾何学模様を連想させるようなクセのあるサウンドを聴いていると、彼の最近の愛聴盤がMITCHELL FROOMだというのも納得してしまう。途中でカーネーションの直枝政太郎がゲストで登場し、カーネーションやNEIL YOUNGの曲で共演。演奏がヒートアップしても、ある種のクールさを保つ青山と、常になまめかしい直枝のプレイは対照的で面白かった。終盤はこれでもかというほどの轟音攻撃で、ブルージーかつ骨っぽい一面を見せつけた。

(JUN/06/98)



「ムサシノ・コズミック・バスキング」 (98年4月23日 日清パワーステーション)
 ゲストを迎えてのカーネーションの2DAYSライヴ、この日はその後半戦。直江政太郎に紹介されて、いきなり一番手として登場したゲストはスピッツだった。会場前方では彼らのファンの女の子が悲鳴を上げていて、ミリオンセラー出すバンドってのはこういうもんなのかと妙に感心する。彼らのアルバムは、「ハチミツ」とカーネーションの棚谷祐一がプロデュースした新作「フェイクファー」しか聴いたことがなかったが、こんなに演奏の上手いバンドだとは思わなかった。ボーカルも安定している。棚谷との共演も数曲あって、素直に楽しめた。

 もう一組のゲストはヒックスヴィルで、彼らの演奏を聴くのは96年の「THE 忘年会」以来。真城めぐみのボーカルには、昔の歌謡曲のような艶があって好きだ。ラヴァーズ・ロック調の曲でキーボードがいやにいい音を鳴らすと思ったら、なんとエマーソン北村だった。

 カーネーションの客層は若くて、さすが上り調子のバンドだと思ったが、当のカーネーションのメンバーたちも実年齢以上に若々しい。メンバーそれぞれ自己主張の強そうな演奏なのだが、一丸となって迫ってきて、これがまたすごいエネルギーだ。適度なささくれ具合もあって、ハードな曲は特に気持ちいい。「EDO RIVER」の演奏では、ねちっこいグルーヴが印象的だった。

 アンコールはヒックスヴィルのメンバーとともにNRBQのカバーを2曲。そしてスピッツの草野マサムネを迎えて、島倉千代子の名曲「愛のさざなみ」を演奏した。島倉千代子を歌う草野マサムネってのもレアだ。2回目のアンコールは「夜の煙突」で、もう皆ここぞとばかりに飛び跳ねる。僕もおおはしゃぎで前に行ってしまい、客電がつく頃にはもう汗だくになってしまった。

(JUN/06/98)