LIVE REPORT Vol.2



鈴木博文&加藤千晶 (98年4月19日 南青山MANDALA)
 南青山MANDALAへは初めて行ったのだが、テーブル席やソファで聴くようになっていて、立ち見を前提としていないことに驚いた。ライヴハウスってよりは、バーというかラウンジというか。当日券を買うため早目に会場へ行ったところ、一番前の席に座れてしまった。

 まず加藤千晶のステージからスタート。バックはギターの西村哲也・チューバなど管楽器の関島岳郎・パーカッションの川口義之だったのだが、川口は立派だった髭をそっていたので一瞬別人かと思った。昨年発売された彼女のファーストアルバム「ドロップ横丁」は、グルーヴのない打ち込みが歌の魅力を削いでいる気がしたが、この猛者たちをバックにした生演奏だと、はるかに自然に歌の世界が広がる。昨年WARAJI LIVEやメトロトロンワークスで聴いた時にはボーカルの不安定さが気になったが、この日はほとんど問題なし。そして、この人の歌声と関島のチューバと音色はすごく相性がいい。新作もこのメンツの生演奏で録音して欲しいところだ。

 続く鈴木博文のステージは、西村と川口の2人がサポート。最初の数曲では、川口の吹くサックスで曲間をつなぐという試みもしていた。ムーンライダーズでの博文も魅力的だが、アコーステック・ギターを抱えた時の彼は、より「うた」が前に出てくる。ボーカルとギターのカッティングが共鳴して生み出す世界は強烈だ。川口の芯の太いサックスの音色とあいまって、この日の彼の歌はよっり一層力強く感じられた。終盤ではインプロヴィゼーションによって混沌した音塊を生み出し、彼も鉄琴を叩くやつでピアノの弦を叩いたりしていた。

 最後は全員揃っての演奏で、西村哲也も1曲歌う。アンコールでは博文のワイルドなドラミングも聴かせてくれた。最後は、娘に捨てられた親の歌「スタジオミュージシャン」を2人でデュエット。本当に親子ほど歳の離れた2人のライヴだった。

 ところ開演前に会場を見渡していて気づいたのだが、どうも男性客は細くて真面目そうな人が多い。くわえて文庫本を読んでいる率が妙に高い気もする。それを見ていると、ライヴというより詩人の朗読会を聞きに来ている客層みたいだな…なんてことも考えた。詩人の朗読会に行ったこともないのに。でも鈴木博文も加藤千晶も詩が素晴らしい点では共通している。そんな彼らの魅力に集まった人達なんだから、これもまんざら偶然じゃないよな、なんてことも思った。

(JUN/06/98)



ムーンライダーズ (98年4月3・4日 新宿パワーステーション)
  メンバーのソロやユニットでのライヴが多かったので久しぶりという感じはしないが、ライダーズとして6人揃ったライヴは96年の暮れ以来。会場に入ると、なんと客席前方にイスとテーブルが並べられている。それはそれでかまわないのだが、いかんせん座れた人以外は、後方の狭いスペースにギュウギュウ詰めで立つことになる。仕事帰りのために入場が遅れた我々にはかなりキツイ状況で、パワステで見たライヴのなかでも最もステージが見えずらいものになってしまった。

 そんな具合でかなりイラついているところに、なんと清水ミチコが登場。ピアノを弾きながら替え歌とかを歌い始めたため、「なぜ?」と会場が疑問符だらけになったのだが、実は彼女が前半の司会だった。それからメンバーが1人ずつ登場して、即興で清水のピアノとの掛け合いを披露。それが終わると今度は公開記者会見が15分ほど行われた。和気あいあいとしたムードで、まぁそれなりに楽しめたのだが、これならどこかのストアイベントでやればいいじゃないかという気もしてしまった。

 しかし、そんな引っ掛かった気分もライヴが始まると吹き飛んでしまうのだから嬉しいやら悔しいやら。今日はアコースティック編成で、しかも中盤には各メンバーのソロ活動で発表された曲が披露されるなど、企画色の強いライヴだった。「鬼火」で渋く始まり、2曲目はなんと「D/P」。繊細なイメージのこの曲にはアコースティックがとてもよく似合う。メンバー6人がそれぞれの曲を演奏するパートでは、各メンバーの個性も見えて面白かった。鈴木博文が歌った「Mr.Sunshine」という曲は、不勉強のため初めて聴いたのだが、とても彼らしいメローディーだ。ライヴ後半ではニューアルバム用のコーラスを客に歌わせて録音し、新曲も2曲披露。「物は壊れる、人は死ぬ 三つ数えて、眼をつぶれ」はジャズへと展開し、「夢が見れる機械が欲しい」で陰鬱なヒートアップをみせてライヴは終了した。アンコールは新曲と、ゴリゴリしたアレンジの「酔いどれダンス・ミュージック」。開演当初は腹が立っていたのに、会場を後にする頃にはすっかり満足してしまっていた。

 4日は前半の公開記者会見の部分が違っていて、司会進行は音楽評論家の能地祐子。昨日に比べ、各メンバーのトークがやや長かった。ライヴの演奏曲目は昨日とまったく同じだったが、選曲もアレンジもいいので聴き応えは昨日と変わらず、充分楽しめた。

(JUN/06/98)



青山陽一 (98年3月21日 渋谷LA-MAMA)
 97年に聴いた中で、「なんで俺はもっと早くから聴かなかったんだ!」と一番悔しがらせてくれたアーティストが青山陽一だった。WARAJI LIVE、メトロトロン・ワークスに続き、生で彼を聴くのは早くも3回目。ライヴは当然のごとく良くて、立ちっぱなしの辛さも忘れて聴き入ってしまった。

 青山陽一もバックのThe Bluemountainsも飾り気のない格好で現れたが、いざ楽器を手に取れば、鳴らされる音はニュアンスに富んでいて、ある種の色気すら感じさせる。流行りのサウンドに流されることなく、ストイックなまでにロックやブルーズの感触を前面に押し出しながら、同時にこれほど多彩な世界を生み出す力量はやはり凄い。スティールギターやブラスを含むThe Bluemountainsが鳴らす音は、地味なようだが一音一音が見事なまでに選び抜かれたもの。サルサやスカなど、リズム・アレンジも凝っている。今日は青木孝明がベースで参加していたが、「曲がる曲がる」での彼のベースには痺れてしまった。終盤の「紅茶ブルーズ」での、熱気と艶をはらんだ演奏も素晴らしかった。

 アンコールではストーンズとビートルズのカバーも披露、特に「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」はジャジーなアレンジで、最後まで驚かせてくれた。

 帰宅後も、ライヴの後の耳鳴りが残る耳で、青山陽一の最新作「Ah」を聴き返してしまった。彼の音楽には、やはり中毒性がある。

(MAR/27/98)



さねよしいさ子 (98年3月1日 下北沢ラカーニャ)
 普段は飲み屋だという下北沢ラカーニャが会場で、狭い店中はお客でぎゅうぎゅう詰め。

 薄着で現れたさねよしいさ子はずいぶんと小柄に見えたけれど、いざ歌い出すと、その声量はやはり凄い。天井に1本マイクがあるだけで、狭い会場には生声が響くという状態だった。

 歌いながら踊る彼女を見ていると、彼女が単なる「歌手」ではないと思い知らされる。一見楽しげでも、自分の内面を吐き出すように歌う彼女は、時として狂気に近いものすら感じさせる。それは身体の動き・表情・歌・歌詞に表出され、そのすべてが相互にシンクロする瞬間には、聴き手である自分が侵食されてしまうような戦慄さえ覚えた。

 中盤では、料理の解説書の朗読から歌につなげるという荒技も披露。それも1度だけではなく何度もやってしまうのがさねよしいさ子というキャラクターだ。妙は妙だが、どんなものでも自己の表現に取り込んでしまう彼女の感覚には頼もしさすら感じる。この日唯一の伴奏者だったピアノの鳩野信二にくらべ、踊りの石丸だいこは、そんなさねよしいさ子のエネルギーに対抗しきれていなった点で違和感が残ってしまった。

 さねよしいさ子の歌が生み出す感動は、歌詞に「あるある」と共感する類のものとは違う。少なくとも僕にとっては違っていて、彼女の世界、彼女の胎内に取り込まれるような感覚だ。彼女は断じて夢想系のほのぼの歌手なんかではなくて、他者との軋轢の中で、自分の言葉以前の感情を必死に投げ付ける、壮絶な表現者だと思うのだが。

 ライヴ終盤で歌われた「グロリア」「鳥の歌」「天使のほほえみ」といった胸をえぐるかのような曲たちはそのことを証明してくれると思うのだが、残念ながらCDになっていない。彼女のようなアーティストを正当に評価するメディアも無いのは至極残念だ。

 アンコール後の退場時、さねよしいさ子は「いろいろなことがあると思いますけど、私の歌が皆さんの慰めになれば幸いです」と語ったけれど、歌をもって現実と対峙する彼女の姿から僕が受け取ったのは、慰めというより勇気と表現した方が近いものだった。

(MAR/14/98)



フリーボ (98年1月22日 NHK放送センター)
 この日はFM録音公開ライヴ。それまでは「Quick Japan」のインタビュー記事を読んだだけだったので、その生真面目そうな印象から、静かな弾き語り系かな?と思い込んでいた。ところが、ステージより居酒屋が似合いそうなラフな格好のメンバー4人が音を出してみると、予想を裏切るアグレッシヴなサウンド。心の準備もできてないし、低音が心臓に悪影響を及ぼしそうなぐらいだった。

 小柄な身体にでっかいギターを抱えるボーカルの女の子は、その姿こそキュートだが、歌い出すと芯の強い声を響かせる。バックの轟音ともしっかりと拮抗してみせるのには驚いた。ライヴだけに歌詞が聴き取れないのは残念だったが、歌心が溢れているのはしっかり伝わってくる。

 演奏は轟音と歌汁の洪水って感じで進む。ギターX2・ベース・ドラムという編成や、曲のヴァリエーションの少なさもあって、途中飽きてきたりもしたが、終盤の盛り上がりで巻き返した。タイトなリズム隊はかなりいい。

 新しい要素なんて何もないサウンドだが、時代の音を追い求めようなんて気負いの無い表現は逆にすがすがしかった。サニーデイ・サービスが好きな人は要チェックだろう。

(JAN/29/98)