ETC. Vol.1



湯浅学「音海」 (ブルース・インター・アクションズ)
 「夜明けの音盤ガイド」というサブタイトルの通りの音楽評論集なのだが、普通のレコードガイドだと思ってかかると、肘鉄をくらわされる。「俺は想像力の入口や出口の設計をすることにばかり興味が向いてしまいがちだ」と語る彼の文章は、音楽から受けるイメージを巧みに表現した形容が渦を巻いている。音楽性や歌詞についての単純な解説に頼らなくても、読み手の内耳にしっかり音を響びかせてくるのだから見事だ。溢れるイマジネーションは猥雑にして美しい。湯浅学は詩人なのだ。

 同時に、彼は最も信頼できる音楽評論家のひとりだ。自分の中の宇宙と響き合う音楽ならば、世間じゃクズ扱いされるようなEP盤まで取り上げる。特別扱いされているのも、藤本卓也・勝新太郎・裸のラリーズという濃すぎるメンツだ。また、ローリング・ストーンズ、フランク・ザッパ、ニール・ヤングという、うかつに取り上げたらやけどしそうなアーティストのほとんどの作品を紹介しているのも凄い。人情と男気の著述家と言ってもいい。

 まぬけ美を体現する装丁も素晴らしい。彼の思想が全編に貫徹している本だ。