CD REVIEW Vol.36 DEC/1999



SONIC YOUTH "GOODBYE 20TH CENTURY" (SYR)
 タイトルだけで欲しくなる2枚組。全曲バンドのメンバー以外によって書かれたもので、しかもJohn Cage・Steve Reich・小杉武久・オノヨーコなどによる現代音楽やそれに類する楽曲がプレイされている。現代音楽畑ながらJim O'Rourkeとコラボレーションしていた小杉武久には以前から興味を持っていたのだが、このアルバムには彼もJim O'Rourkeらとともに演奏に参加。現代音楽そのままでSONIC YOUTHらしからぬ演奏もあるものの、それでも歪んだギターを吐き続け、オルタナティヴからのノイズ、音響派やフリージャズまで縦断していくようなサウンドが展開されている。構築性と肉体性のバランスは絶妙で、緊張感の溢れる演奏はかなりの集中力を要求するものの、定義不能の音が鳴る気持ち良さがあった。

 エンハンスドで収録されたムービーでは、メンバー全員でピアノの鍵盤に釘を打っていく「演奏」を見ることができる。



SOUL FLOWER UNION "HIGH TIDE & MOONLIGHT BASH" (RESPECT)
 沖縄の三線が弾かれ、チンドン太鼓が鳴り、合いの手が入れば、アイルランドのブズーキも響く。それでもロックン・ロールとしか言いようのないのが、ソウル・フラワー・ユニオンの音楽だ。

 阪神大震災の被災地ではチンドン編成で活動するなど、彼らの音楽性と活動姿勢はともに日本のロック・シーンで異色だ。それゆえ、不幸なことに過剰なほど政治性に注目されてしまってもいる。 しかしこのライヴ盤は、そんな誤解を吹き飛ばすのに充分だ。前身バンド時代の楽曲や、ボーカルの中川敬のソロ・ユニットの楽曲も含む本作は、彼らの集大成とも言えるベスト盤的選曲でもある。

 中川敬の歌声は邪悪なまでの迫力だ。バンドの演奏は、空間が歪みそうな轟音を吐き出しながらも、同時に生真面目な端正さも持ちあわせ、演奏の随所にはジャズ的なフィーリングもうかがえる。そしてこの音楽からは、表層にとどまらない日本的なニュアンスが染み出していて、それこそが彼らの獲得した重要な音楽的成果だと言えるだろう。

 世の悲哀を吸い込んで、なお腹の底から笑ってみせる懐の深さ。実はとても情感に溢れているのだが、しかしそれは傷を舐め合うような馴れ合いとは無縁でもある。ソウル・フラワー・ユニオンの音楽は、個に根差しているのだから。

(from『DOS/V magazine CUSTOM』Vol.4)



Robert Wyatt "The End Of An Ear" (COLUMBIA)
 70年に発売された、Robert Wyattの初ソロ作。フリージャズ的な要素の強いアヴァンギャルドな音楽だが、フリージャズものとはまた違った文脈を感じるのは、リズム面が基本的にロックだから。しかしあまりにも脱ロックな作品で、曲によってはSUN RAのESP盤「Heliocentric Worlds」を連想させられる。Gil Evans作曲の2曲は、勝手な想像で民族音楽をやっているかのような声が飛び交っていて、原曲と聞き比べたくなった。無邪気とまでは言えないけれど、理論理屈で構築されているような堅苦しさはなく、フリーではあるけれど確信があるかのあるような強く打ちつける響きがある。そして、うつらうつら眠りながら聴いたら、グチャッとした嫌な夢をみてしまった。



"枡野浩一プレゼンツ君の鳥は歌を歌える" (東芝EMI)
 歌人である枡野浩一が全曲を作詞したこのアルバムは、彼が敬愛するTOMOVSKYや山中さわおらが作曲・アレンジ・歌などを担当し、曲名は全部短歌という枡野浩一イズムに貫徹された作品だ。当然曲ごとにサウンドの感触は大きく違っていて多少の落差はあるが、むしろ基本は歌志向。カステラやピーズを愛する枡野浩一らしく、馬鹿馬鹿河馬河馬と投げやりに歌う「振り上げた握りこぶしはグーのまま振り上げておけ相手はパーだ」では、その詞に拮抗すべく馬鹿馬鹿河馬河馬と投げやりに黒須チヒロが名唱を聴かせる。そうかと思うと、「セミくらい大きな声で鳴けたならモラトリアムが長かったなら」のような胸に沁みるラヴソングもあり、恋の終わりの心理を描写するこの曲には、銀色夏生の名作「バランス」をアルバム制作にあたって目標にしたという枡野浩一の言葉を思い出した。DOREMIが作編曲と歌を担当し、詞を完全に自身の世界へ取り込んでいる「それを見る僕のたましいはの形はどうせ祈りに似ていたのだろう」は一種のオーラを放っている。



坂本真綾 "シングルコレクション プラス ハチポチ" (VICTOR)
 声優歌手ってどうして元気が売りものの人が多くてダウナー系の人がいないのかと考えていたけれど、そういうポジションに一番近いのは坂本真綾かも知れない。時に内省的で歌に重さがあるけれど、聞き手の幻想を壊さない程度には穏やかであるという微妙なバランスの上に成立している世界だ。

 声優という面から切り離しても音楽が単体として充分に聴けるわけで、それを支えているのは菅野よう子。独特のクセがあるストリングス・アレンジ、民族音楽的な要素の配置などの彼女の得意技も披露されているけれど、基本的には彼女の職人気質がいい方向に作用したすっきりとしたポップスだ。そこに坂本真綾の凛とした歌声が乗ると、透明度はさらに上がる。

 このシングル中心の編集盤では、エキゾチック全開のサウンドで歌いづらそうにしている「奇跡の海」も、細かな感情表現が驚くほど上達した「CALL YOUR NAME」も聴くことができて、その成長ぶりに驚かされた。大人になっていくんだね。