CD REVIEW Vol.34 (side B) OCT/1999



Harry & Mac "Road to Louisiana" (EPIC)
 冒頭から熱い汁がジュッと染み出してくるようなリズムが飛び出してきて、それに続くは渋い女性コーラス。ニューオリンズ音楽にまだまだ疎い僕には、細野晴臣と久保田麻琴によるこの渋さと濃さはとても新鮮だ。久保田麻琴の歌声も味があるし、「Choo Choo Gatta Gotto '99」のバックのオルガンもたまらない。細野晴臣は「チューチュガタゴト」や「ポンポン蒸気」といった曲の再演が中心で、新たに曲を書き下ろしている久保田麻琴の方が前に出ているのが意外だった。

 GARTH HUDSONやJIM KELTNER、Wild Magnoliasに加入している山岸潤史が参加しているけれど単純にニューオリンズ音楽集というわけではなく、鈴木茂や林立夫も演奏しているほか、サンディーが歌うハワイアンやVAN MORRISONや金延幸子のカバーなどもある。つまりはニューオリンズを含んだ自分たちのルーツを再確認するアルバムで、まだまだ旅を続ける男たちの余裕が表れていた。



BILL FRISELL "THE SWEETEST PUNCH" (DECCA)
 ELVIS COSTELLOとBURT BACHARACHの共作盤「PAINTED FROM MEMORY」を、BILL FRISELLがアレンジして再演したのが「THE SWEETEST PUNCH」。単純に言ってしまえばジャズ編曲のインストになっていて、自由な空気と音の膨らみのある演奏は、下手をするとオリジナルよりも気に入ってしまいそう。「PAINTED FROM MEMORY」は緻密過ぎて聴いていると窒息しそうだったけれど、このアルバムではシンプルな編成によって楽曲の持っている情感がナチュラルに増幅されている。ELVIS COSTELLOとCASSANDRA WILSONが2曲づつボーカルで参加。管楽器の音色もしなやかな1曲目「THE SWEETEST PUNCH」からして胸高鳴るものがある。



ARTO LINDSAY "PRIZE" (RIGHTEOUS BABE)
 英語とポルトガル語で歌われる、ブラジル音楽と前衛性が混在する世界。人工的なんだけどしなやかさも持ち合わせていて、ほどよく冷えた感じが心地いい。このクールさは、音楽における情緒表現を一旦止めて、音そのものに磨きをかけているかのようだ。ノイズと金属的なビートに乗るARTO LINDSAYの歌に、ヴォイスが絶妙に絡む「PREFEELINGS」は身震いがするほどかっこいい。近年のブラジルのミュージシャンの作品と共通する感触だが、ここまで内省的な雰囲気はやはり彼にしか作れないだろう。知的な風貌でワイルドなギターを鳴らすARTO LINDSAYは、孤独を受け入れた大人のようにも見える。



空気公団 "ここだよ" (CoaRecords)
 空気公団のミニアルバム「ここだよ」は、録音機材の関係かモコッとした質感の音に包まれている。表現力が巧みというわけじゃないけれど、ボーカルはそんなサウンドとの相性が良くて、70年代っぽいメロディーは感情と真っ直ぐにつながっているかのようだ。タイトル曲「ここだよ」での微かな緊張感を浮きあがらせるアレンジからすると、ヘタウマのように見えて実はけっこう器用な人達なのかも。「退屈」で気持ちよく響くハンディクラップを聴いていると、単純に比較は出来ないけれどサニーデイ・サービスの新作「MUGEN」に通じる雰囲気も感じた。それは吸収してきた音楽を懐古ではなくリアルな表現として再生できる能力があるからだろうけれど、きっと本人たちはそんなことには無意識なんだろう。



Chappie "NEW CHAPPIE" (SONY)
 チャッピーというキャラクターの皮をかぶった、アフター渋谷系オムニバス盤。作家陣が曲ごとに変わるのはもちろん、当のチャッピーも歌い方や声質が曲ごとにコロコロ変わっていて同一人物のはずもない。ROUND TABLEを押さえつつ、草野正宗・山崎まさよし・川本真琴も作家やゲストとして呼び込み、井上陽水まで迷い込んだように参加。小西康陽が「The International Chappie's Cheer―leading Team」でチャッピー外人説を唱えれば、森俊彦と福富幸宏もそれに続く。極めつけは、松本隆作詞・細野晴臣作曲・TIN PAN ALLEY演奏・森高千里ボーカルという布陣による「七夕の夜、君に逢いたい」。一気に渋谷系の源流までのぼりつめてしまっている。でもチャッピーのイメージに一番近い気がしたのは、「Welcoming Morning」で堂々のテクノポップを聴かせたpal@popかな。