CD REVIEW Vol.33 (side C) SEP/1999



JOHN ZORN "MASADA" (DIW)
 サックス+トランペット+リズム隊の4人編成による94年作品。マサダとはユダヤ人にとって重要なイスラエルの土地の名だそうだが、このアルバムの音楽は東欧系ユダヤ人の音楽・クレツマーを強く連想させる。2本の管楽器のズレが生み出す妖しさは強烈で、小編成とは思えないほどイメージを喚起する。このスリルは、表現の幅の広さと、クレツマーのジャズ解釈によって生み出されるものなのだろう。



YMO "YMO GO HOME!"" (東芝EMI)
 アルファの音源が東芝EMIから再発されたおかげで再結成時の曲も収録できた2枚組ベスト。ベスト盤は数あれど、細野晴臣選曲のこれが決定打だろう。オープニングからエンディングまで計算された構成はさすがだ。アコースティックというかフォーク編成でのライヴ音源も2曲収録。フュージョン臭さも心地よく、テクノ・ポップの快感を満喫できる。今聴くと、以前はあまりなじめなかった「テクノデリック」と「BGM」のサウンドが一番しっくりくる。ライナーで「『体操』はミニマルを目指した」といった趣旨の発言を細野がしていて、なるほどと思った。
(from『DOS/V magazine CUSTOM』Vol.2)



JAGATARA "西暦2000年分の反省 THE BEST OF JAGATARA" (BMG)
 以前出たCD類の中では唯一持ってなかったので、再発を機に購入。ライヴやインタビューなどでの江戸アケミの発言が曲間の一部に挿入されている。初めて聴いたのは、財団法人じゃがたら時代の2曲。15分ある「都市生活者の夜」を大学生だった頃に何度も聴いたことを思い出した。JAGATARAには長い曲が多かったけれど、23分ある「SUPER STAR?」など長尺の曲もちゃんと収録している。



RICHARD THOMPSON "MOCK TUDOR" (CAPITOL)
 カントリーロック爆裂の「TWO-FACED LOVE」がたまらない。頭からたたみかけるみたいに威勢が良く、余裕を持った紳士然としつつ張りのある声は前方へ突っ込んでいく。ブル−スハープはアヒルみたいだ。1枚のアルバムの中で3部構成をとっていて、レゲエの「CRAWL BACK」やマンドリンの響きが美しい「UNINHABITED MAN」など楽曲のヴァラエティーでメリハリをつけている。メロディーの良さと演奏のしなやかさがあるのは、もちろんのことだ。



こだま和文 "Requiem DUB" (Speedstar)
 全10曲のうち、同じ楽曲のダブ・ヴァージョンも収められているので、楽曲自体は実質4曲ほどだ。クールに打ちつけるバックトラックと、歌うようなトランペット。各曲のサウンド上の違いは大きくないため平板と紙一重だが、醒めた雰囲気には声高に叫ばれることのない悲しみが漂っていてそれを救う。「O LITTLE TOWN OF BETHLEHEM」のなんと優しく孤独で、そしてどこかに吸い込まれて消えてしまいそうなことか。