CD REVIEW Vol.33 (side B) SEP/1999



Taking Heads "12x12 original remixes" (EMI)
 80年代に発表された12インチシングルなどに収録されたリミックス・バージョンを集めたもの。外部のリミキサーに任せてオケを入れ替える現在のスタイルとは違い、この頃のリミックスはミュージシャンやミキサー、プロデューサーなど制作した当人たちによって音を足して長尺にするのが一般的だった。Taking Headsの場合、ワールドミュージック的要素が胡散臭く増量されているのが面白い。聞き物は、「Once In A Lifetime」のイントロからつなげられる「RADIO HEAD」。元から曲もサウンドも完成度が高いので安心して楽しめるが、あまりにも80年代臭の強いサウンドはクラクラしてきた。



梅津和時 "FIRST DESERTER" (Knitting Factory)
 録音は95年、その後日本のオフノートから「最後の脱走兵」というタイトルで発売され、Knitting Factoryからもアメリカ盤が出た作品。「AVANT MUSIC GUIDE」を読んでTOM CORAというチェロ奏者の名が記憶に残っていたのだが、このアルバムには彼が参加していて、しかもMARC RIBOTやSAMM BENNETTというニューヨークのアヴァンギャルド系ミュージシャンも参加している。彼らにWAYNE HORVITZを加えたユニットによる作品と捉えることもできそうだ。

 梅津のサックスがゴリゴリと前面に出るのではなく、また僕が勝手にイメージしていた「梅津的抒情」も抑え目で、まさに5人でのセッションという趣き。それぞれのミュージシャンの繰り出す音のエッジは立っていて、特にMARC RIBOTのギターは強暴なほどだ。冒頭ではサンプリングや打ち込みが使われていて驚いたが、その鳴り方はクール。抽象性のゆらぎの中を漂うような場面もあれば、激しく拮抗する音の快感も味わうことができる。めまぐるしく展開し定型の破壊を繰り返しながら、しかしひとつのイメージへ結実するようなサウンド群に陶酔させられた。



ART ENSEMBLE OF CHICAGO "FULL FORCE" (ECM)
 80年作品。冒頭からして、音から音楽が形成されていく過程のドキュメントのような楽曲だ。民族音楽の要素をちりばめながら、獰猛な迫力と知性的な端正さを併せ持つフリージャズ。一定のリズムをキープして演奏されている「Charlie M」のような曲もあるが、他の曲では安心できない。しかし一定のルールあるいは理論の中で演奏されているような雰囲気もあり、「Full Force」は演劇のようでもある。



FRANK ZAPPA "THE YELLOW SHARK" (Rykodisc)
 生前最後のコンサートを収録した93年作品は、FRANK ZAPPAの作品を現代音楽専門のオーケストラが演奏したものだ。管弦楽による演奏は優美だが、複雑で抽象的なメロディーラインも数多く現れ、全体的に硬質で艶やかな世界が広がっている。かと思うと突飛なフレーズが飛び出しもするのだが。セリフ入りの2曲でのユーモアはやはり彼らしく、でも美しい曲はどこまでも美しい。後者の特徴は、悲しげな楽曲ではっきりと浮かび上がる。



GROUND-ZERO "革命京劇" (TRIGRAM)
 大友良英が率いていたバンドの95年作品。中国京劇をサンプリングした、ゲッベルス+ハルトのオペラをさらにサンプリングした再構築作品だ。サンプリングは、歪んだ演奏との境目が見えないほど複雑であり、電話の録音・毛沢東の文章や性生活報告(?)の朗読などがコラージュされる。それは混線した電話、あるいはラジオの周波数を変えつづけているようだ。あるいは、全体から要素へ、要素から全体へという解体と構築の作業を繰り返す現場記録かもしれない。音楽という概念を掻き回される快感を覚えるのは、マゾの証拠か?