CD REVIEW Vol.31 (side B) JUL/1999



Terry Riley "Reed Streams" (Cortical Foundation)
 ミニマルミュージックは同じフレーズの連続だけれど、形成するリズムは微妙なズレを伴って、次第に違ったフレーズを構成していく。そして同時に、音楽を楽器で演奏するという概念を捨てて音が単なる音になる瞬間、音の記号性が失われる快感がそこにはある。

 ここに収録された3曲は、それぞれ14分から30分近くにまで及ぶ長さだ。それらはオルガンや管楽器のリードによる単純な音によって構成されているはずだが、その繰り返しと重層により、オーケストラに劣らぬ錯覚すら与える。

 特に秀逸なのは、パーカッションを主体とした「In C」。金属質の音色はガムランにも通じ、そのダイナミックさは覚醒を導く。 それはロック的な興奮に劣ることなく、いつの間にか現れる電子音とともに混沌を生み出す。ベース+ドラムというロックのリズム隊と、単純さゆえに強烈なリズムを作り出す打楽器、音の隙間を埋め尽くす管楽器音。壮大な交響曲に匹敵する感動すらここにはある。



PIZZICATO FIVE "nonstop to tokyo e.p." (*********)
 ゴージャスな夏を軽薄に演じる確信犯として彼らを超える存在はそういないはずだ。4曲+別エディット1曲によるミニアルバム。消費財となる覚悟を当然のように見せながらも、他人への提供曲よりアイデアとか音の塗り方がワンランク上という薄情さも小西康陽らしい。サンプリングと演奏を配分するセンスはもはや安定していて、「マドモワゼル」のタイトルと大味なぐらいのネタの使い方が逆に聴かせるほどだ。しかもダバダバ言ってやがる。



キリンジ "47'45"" (WARNER)
 斬新な音楽的要素がないとしても、それとは別の次元で新鮮さを感じさせることは可能なのだろう。そんなことに気づかせてくれるのがキリンジの音楽だ。

 キリンジは、堀込高樹・泰行兄弟による2人組。かせきさいだあの曲作りに参加してきたほか、最近では堀込高樹がSMAPに曲を提供している。

 キリンジの音楽は、ロックというよりもポップス。卓越したソングライティングと練られたサウンドは、圧倒的なクオリティだ。けれど飄々としていて、微妙な屈折がチラチラと見え隠れしている。

 新作「47'45"」では、カントリーっぽい曲や泥臭く迫る曲などもあるけれど、全体的にはメロウで洗練された楽曲が目立つ。弦管楽器の響きも麗しく、歌われるのは恋の甘辛さ。昨年発売されたデビューアルバムも素晴らしかったが、新作では早くも貫禄さえ感じさせる。  また、彼らの作詞技術は非常に高度。言葉同士の噛み合わせの違和感からイメージを膨らませていき、さらにストーリーを組み込んでいくという複雑さだ。

 ジャケットは、走る男と彼を追うリポーター。なにそれ。この物腰柔らかに人を騙す紳士のようなスタンスが、キリンジらしさだ。一見穏健に見ながら実は不穏であるという罠。それは彼らが歌う恋の駆け引きのようだ。

(from『DOS/V magazine CUSTOM』Vol.2)



ピエール・ブーレーズ指揮 "シェーンベルク:浄められた夜 他" (SONY)
 商学部出身の僕が大学時代に最も熱心に学んだのは音楽の授業だったことは、そもそもの学部選びが間違っていたと認めざるを得ない事実だ。4年の時に受けたその一般教養の授業は、前期が民族音楽、後期が現代音楽だった記憶があって、シェーンベルクの「浄夜」(CDによって邦題が違う)もその授業で聴いた楽曲。後期ロマン派の香りが強いと解説に書いてある通り、今聴くと意外と普通のクラシックっぽく、重く厚く艶やかな弦楽の響きはやはり気持ちいい。一緒に収録されているベルクの「抒情組曲」と「ヴァイオリン協奏曲 ある天使の想い出に」の方が、不安を煽るような音のうねりが現代音楽的。無調や十二音技法といった単語も、そういえば習ったような記憶が。



"オキナワン・ヒッツ&スタンダード" (nafin)
 沖縄の民謡や普久原恒勇らによるヒット曲を、伊波智恵子をはじめとするナフィン・レーベルの女性歌手たちが歌ったアルバム。1曲を除いた全てのアレンジを桜井芳樹が担当し、演奏にも関島岳郎・中尾勘二・久下恵生などのオフノート周辺の猛者たちが参加してる。元は民謡の「ゴーゴー・チンボラー」は、ジャズファンクなアレンジになってて唖然。そして体が動き出してしまう。「我がー判ゆん」には、初めてスーダン歌謡を聴いた時のような泥臭さを感じた。ギターや三線によるシンプルな演奏では深みやおおらかさを感じさせる一方、「いちゅび小」のワイルドな味わいや、「白浜ブルース」のジャズっぽい小粋なアレンジなど、そこらのロックの凡庸なリミックス盤が吹き飛ぶような意匠の凝り方だ。ラストの雄大さが沁みるアルバムの構成も秀逸。



Todd Rundgren "THE VERY BEST OF Todd Rundgren" (RHINO)
 最初はTodd Rundgrenの名作と言われる「Something/Anything?」を買おうと思っていたのだが、「I Saw The Light」や「A Dream Goes Forever」など、他のアーティストによってカバーされた曲の数々を収録しているベスト盤に浮気。ソロのほかUtopiaの曲も入っている。「Real Man」「Couldn't I Just Tell You」「Something To Fall Back On」…いい曲ばかり。特に「Can We Still Be Friends」では、メロディーの美しさとそれを飾る緻密ながら無駄のないアレンジに卒倒寸前になった。