CD REVIEW Vol.30 (side A) JUN/1999



CIBO MATTO "STEREO☆TYPE A" (Waner Bros.)
 大々的な海外進出を図らなくても、音楽自体のクオリティーとミュージシャン同士のネットワークによって、海外でファンを獲得している日本人ミュージシャンが増えている。そして海外を活動拠点にして成功した好例が、羽島美保と本田ゆかによるチボ・マットだろう。

 96年にアメリカのワーナー・ブラザーズから発売されたファースト・アルバム以来、実に3年ぶりにニューヨークから届いた新作が「ステレオタイプA」だ。ロックやヒップ・ホップ、ラテンなどの様々な要素が詰め込まれ、1曲の中でさえ次の展開が予想のつかない音世界。それを高い構築度と肉体感をもって生み出しているのが彼女達の魅力だ。

 剥き出しの鉄骨のような無機質さはやや後退し、ショーン・レノンとティモ・エリスを新たなメンバーとして迎えたせいか、バンド的なしなやかさが全面に出てきた。日本盤では、これまでのイメージからすると意外な、切ないラヴソング「BACKSEAT」も聴ける。

 日本人、また女性ということで直面する、海外の活動での様々な障害を乗り越えて発表された新作のタイトルに、「ステレオタイプ」という逆接的な言葉が掲げられているのも痛快だ。そういえば、彼女達のファースト・アルバムのタイトルも「VIVA! LA WOMAN」だったのだ。

(from『DOS/V magazine CUSTOM』Vol.1)



RANDY NEWMAN "BAD LOVE" (DreamWorks)
 オリジナルとしては88年の「Land of Dreams」以来になる新作は、渋さく枯れた歌声と重みがあるピアノの音で幕開けだ。プロデュースはMitchell FroomとTchad Blake。大胆な音響処理をしない代わりに、歌にコクを与えるようなアレンジを施している。

 RANDY NEWMANの音楽は、メロディーの美しさと裏腹に人をたやすくは寄せつけないクセのある雰囲気なのだが、適度に下世話な感じもする。それは彼が背負う音楽的バックグラウンドによるものなんだろうと、「THE GREAT NATIONS OF EUROPE」を聴きつつ思った。伝統に深く根ざした音楽は強い。



"テクノ歌謡 東芝EMI編 デジタルラブ" (BLUES INTERACTIONS)
 クラブイベントで聴いた酒井司優子の「コンピューターおばちゃん」1曲だけのために買ってしまった。「コンピューターおばちゃん」は坂本龍一プロデュースの素晴らしくキャッチーな曲で、しかも坂本自身がドラム叩いている。

 そして思わぬ伏兵だったのが、志賀正浩の「おんどピコピコ」。どこかで聞いた記憶があると思ったら、僕が小学生の頃「おはようスタジオ」で流れていた曲だった。赤塚不二夫+クニ河内というよく脈絡が分からないコンビによる作品だ。

 難解なイメージだったマジカル・パワー・マコのむやみにポップな曲とか、小林完吾のナレーションが入っている曲とか、これだけ聴いたら80年代を間違って解釈してしまうこと確実の強力な曲揃い。羽賀健二(現・研二)の「ネバーエンディング・ストーリーのテーマ」に、「なんで俺はこんなの聴いてるんだ」と不意に我に返ってみるのも一興だろう。詳細かつ大笑いの解説も充実している。



キリンジ "牡牛座ラプソディ" (WARNER)
 彼らが昨年発表した「ペイパードライヴァーズミュージック」は、僕が去年一番聴いたアルバムだったかもしれない。このマキシシングルのタイトル曲は予想したほどキャッチーじゃないけど、すごい情報量だ。KYONや渡辺等らを迎えて、飄々としていながらファンキー。それにしても、兄弟揃ってなんでこんなねじ曲がった言語感覚なんだろう。



DL PROJECT "TRANSIT LOUNGE" (SONY)
 かつては熱心なDICK LEEのリスナーだった僕だけど、気がつけばアルバムを聴くのは92年の「The Year Of The Monkey」以来。久しぶりに久保田麻琴と組んだこのアルバムでは、ラウンジがテーマ。アジアっぽさを全面に出すのではなく、趣味のいいポップスを凝りつつもさらりと聴かせていて、その中にアジア的な感覚を滲ませてる印象だ。久保田プロデュース作品としては、サンディーの「WATASHI」の手法に近いとも言えるかも。でも、ディックと久保田が組んだ90年の傑作「ASIA MAJOR」を聴いてる身には、もうちょっと濃い味付けを期待していたのも事実なんだよな。