CD REVIEW Vol.27 (side B) MAR/1999



LATIN PLAYBOYS "DOSE" (Atlantic)
 鬼のように音をいじり倒す4人組の第2作目。エフェクトまみれのサンプルと、ぶっとい重低音の両面攻撃で攻めてくる。「Mustard」で脈絡無しに持ち出されるのは琉球音階。中南米っぽいメロディーがあっても、出所不明の抽象性が今来た足跡を消していくようなサウンドだ。特定のイメージを抱える音を意図的に交錯させることで聴き手を混乱に落とし入れる、底意地の悪そうな音楽だが、けっこう茶目っ気もある。立ち入り禁止の化学実験室で禁断の生物を目にしてしまったような、変な気分にさせられるアルバム。



STEVE REICH "Reich:Exclusive Selection" (NONESUCH)
 日本でのみ発売されたSTEVE REICHの自選ベスト盤。2人の手拍子が次第にズレて複雑なビートに変わっていく「CLAPPING MUSIC」や、PAT METHENYのギターのフレーズの積み重ねが重層的なサウンドを生み出していく「ELECTRIC COUNTERPOINT」をはじめとする、現代音楽の巨匠のヒット・パレード大全集だ。

 「現代音楽」や「ミニマル」なんて言葉で形容されると難解そうだが、「DRUMMING」などの打楽器を中心に据えた楽曲も非常に気持ち良くてトランス状態を誘発してくれる。「NAGOYA MARIMBAS」でのマリンバ二重奏もスリリングにして心地良く、テクノを聴きなれた耳だと違和感なし。汽車の汽笛と人の声をサンンプリング「DIFFERENT TRAINS」はドラマチックでもあるし、ニューヨークの町の音をサンプリングした「CITY LIFE」には詩情も感じられる。オーケストラとコーラスによる「THE DESERT MUSIC」や舞台作品の「THE CAVE」は、一度聴いただけでは構造が判然としないけど、それが同時に快感だ。

 メロディー・リズム・ハーモニーという音楽の3要素をいじって実験しながらもこの気持ち良さ。理論と感性を持ち合わせた音楽家なんだろう。



鈴木博文 "Birds" (METROTRON)
 湾岸王・鈴木博文の、オリジナルとしては実に4年ぶりになる新作は、最初の1曲を聴いただけでサウンドの瑞々しさに驚かされた。粒の大きな楽器の音がどれも活き活きとして、歌・演奏・楽曲がひとつになって生み出す空気は他とは比べようも無いものに。リラックスした雰囲気は前作「孔雀」と同じなんだけど、ちょっと前屈みで攻勢に出てる感じが嬉しい。感情の起伏を激しく打ち付けるのではなく、日常に現れては消える愛しさや苛立ちやユーモアを歌い上げ、渋さとともに生み出されたのがこの深み。全体を通しての印象は、まさにブル−ズだ。



Fanfare Ciocarlia "Radio Pascani" (piranha)
 今から10年ほど昔、バルカン半島から来たと言い張る3 Mustaphas 3というバンドがイギリスにいて、闇鍋のような音楽で酔狂なワールドミュージック・ファンを狂喜させた。その彼らが参考にしたひとつはこんな音楽なのかなと思ったのがFanfare Ciocarlia。ルーマニアのジプシーによる11人組ブラス・バンドだ。東欧〜アラブ的な要素が強く、哀愁も滲ませながらかなり陽性。オヤジ揃いで高年齢だと思われるのに、つまづくことも恐れずに23曲を一気に疾走する。音がとぐろを巻いてるような気持ち良さだ。