Vol.22 (side A) OCT/1998



広末涼子 "ジーンズ" (WARNER)
 明るく前向きな「ジーンズ」も悪くはないけれど、このシングルで耳を奪われるのは、むしろ椎名林檎の作詞作曲によるカップリング曲「プライベイト」だ。アクの強い世界を全開にした「歌舞伎町の女王」が一部で話題になった椎名だけど、ここでも広末と1歳差だとは思えないほど確固たる個性を発揮。他人への提供曲でも、漢字表記の多い歌詞、「欲して居た」などの独特の言い回しは相変わらずだ。

 そして、切々と歌われるこのミドル・ナンバーは、「ジーンズ」と比べても歌の影の深さ、リアリティーがまるで違っている。広末も、これまでにないほど小技を駆使して歌っていて、そのちょっと無理が見えるあたりがまたいい。

 シンセのストリング音が安い印象なのは惜しいところだけど、これまで歌われてきた人畜無害な曲と比べるに及ばず、間違いなく広末の楽曲中のベストだろう。椎名林檎、恐るべし。



広末涼子 "WINTER GIFT '98" (WARNER)
 5曲入りCDとビデオのセットなんだけど、CDに入ってる新曲は「青い月に浮かぶ月のように」のみ。他は、既発曲の毒にも薬にもならんリミックスとかでお茶を濁されている。「青い月に浮かぶ月のように」は、平岩英子のペンによる非常にいい曲なんだけど。

 これまでのシングル6曲のクリップを収めたビデオの方では、「風のプリズム」のタメを効かせた映像が出色の完成度。監督は永石勝。先頃、映画「サムライ・フィクション」を公開した中野裕之による「ジーンズ」は、女性誌のグラビアのような世界の広末を切り取ることに成功している。

 ちなみに、永石勝監督によるもう1本のクリップ「summer sunset」に出てくる彼氏役は、あのMITSUU。こいつのせいで、全国の広末ファンの心もサンセットって感じだ。



FATBOY SLIM "YOU'VE COME A LONG WAY,BABY" (SKINT)
 言葉の繰り返しから始まってサンプリングのループへ移るような、やけに分かりやすい構成の曲が多くて逆に驚く。でもその単純さの中には、どっか人を食ったような雰囲気があるんだよな。つまりは単純明快とまでは行かないけれど、適度にお馬鹿、適度にシリアス。これもキャリアの成せる技? 大味な音をビービー鳴らしてる感覚は、電子楽器で奏でるエエジャナイカみたいなものか。踊れや踊れ。俺は座って聴くけど。



"ELECTRIC KINGDOM - THE"ELECTRO CRASH '98"COMPILATION" (LOWSPIRIT)
 地味だよなぁ、TakBam。天下の石野卓球とWestBamの共演という豪華なイメージからはほど遠い地味さなんだけど、こういう実験性が許される自由があるってことだよね。WestBamとアフリカ・バムバーターによる曲にしても、彼のソロにしても、音の隙間を恐れない勇気に平伏。

 このエレクトロ音楽のオムニバス盤は、他の曲も脱ポップスというムード強し。ポップスには成り得ない沈鬱なムードを抱えてるのだ。神経を逆なでるようなベヨネヨした音が鳴りまくってて、はっきり言ってこういうの大好きなんだが、これだけ同じようなサウンドが並んでいると差異が見えにくいのも事実だったりする。

 オムニバスなのに曲の繋ぎが自然なのは、DJ魂を見せてて立派。