Vol.21 (side A) SEP/1998



adventures in stereo "alternative stereo sounds" (FLAVOUR)
 手垢にまみれた表現手法をいかに新鮮に提示するか、それにサラッとした顔でひとつの答を出しているのがこのアルバムだ。60〜70年代ポップスの要素を詰め込んだ曲が並んでるけど、どれも「えっ、これで終わっちゃうの!?」っていうくらいに短い腹八分目感覚。気が抜けたボーカルに薄いサウンドだけれど、メロディーとハーモニーというポップスの芯の部分はしっかりとつかんでいる。一輪挿しの花のような音世界だ。



"CARNIVAL 97" (AL-NAZAER)
 クウェートのポップスのオムニバス盤。冷めた艶のあるストリングス、ポカポコ鳴るパーカッションなどは、いかにも湾岸ポップスで、サウジアラビアなんかのポップスと比べてもそんなに変わらない印象だ。1曲が長め、そしてアルバム収録時間が短め(30分ぐらいがザラ)なんてところまで同じ。あっさりめの歌声が多い中、FATOUMAという女性歌手のねっとりとしたコブシまわしが気に入った。なぜかカラオケも1曲入ってる。



the divine comedy "fin de siecle" (SETANTA)
 様式美を感じさせる非様式美。Neil Hannonのこのソロ・ユニットは、オーケストラを従えての大英帝国的音絵巻を過剰なまでに展開している。大仰なほどのゴージャズさと、ほどほどの胡散臭さが生み出す空気がたまらない。曲もしっかりポップで、弦楽器や管楽器の音も艶やか。

 「The Certainty Of Chance」のようなバラードを聴いて、これってグラムロック的美意識の別解釈なのかとも思ったが、それよりも遥かに陰影が深いのも魅力。ロック寄りの曲もあるけど、「Generation Sex」や「Sweden」などには、華麗なる頽廃、スタイリッシュさ、大仰なロマンティシズムが溢れている。



WAGON CHRIST "TALLY HO!" (personal)
 こちらもソロ・ユニットのWAGON CHRISTは、plug名義でもアルバムを出していたLUKE VIBERTによるもの。クールにしてパラノイアなドラムンベースだったplugに比べ、より音数が減った印象で、全般的に芯の太いサウンドだ。テクノの寄りになってきたけど、小技が耳に心地いい音響感覚はそのまま。 強いながら簡素なビートに、言葉少なに鳴るキーボードが絡むトラックが多い分、一音に込められたニュアンスは繊細だ。「FLY SWAT」もすごく洒落ている。

 キャッチーな「WORKOUT」や、ボーカルも入るレゲエの「LOVELY」を経て、だんだん甘さが抜けていく終盤の展開が聴き所。



パラダイス・ガラージ "実験の夜、発見の朝" (east west)
 全編にみなぎる、脱力しきった不安定感。言葉が矛盾しているが、そんなことは大した問題じゃない。聴き手は冒頭の「僕は間違っていた」から、はちきれて破れる寸前の激情にいきなり巻き込まれる。運悪くパラガと波長が合ってしまったら、生傷がさらに押し広げられてしまうのは確実だ。

 これまでの宅録路線から、福富幸宏やyes,mama ok?の金剛地武志らを迎えているが、彼の作品は見事なまでに動じない。歌われるのは、ダウナー気味の毎日の喜怒哀楽。実は恋の歌も多くて決して悲痛なムードじゃないはずなのに、幸福感に酔わない精神が、胸に沁みる「中之島図書館」の弾き語りを生む。そしてシングルにもなった「I love you」は、混沌とした中に醒めた視線と茫漠とした愛が渦巻く名曲だ。向島ゆり子のヴァイオリンの音色も美しく、ひしゃげたサウンドは歌の生々しさを強めるばかり。それは結実と呼ぶにふさわしい。

 世界と自分との距離が赤裸々に綴られた歌を、嫌わば嫌え、俺は愛する。



ズボンズ "LET IT BOMB" (QUATTRO)
 彼らの黒人音楽の消化の具合はかなり進んできた。そりゃJAGATARAほどじゃないにせよ、単なる摸倣のようでも明らかに違うノリがあって、身体の奥の何かを疼かせる。

 「Ships Are Alright」はまんまアフリカ音楽みたいだけど、ゆるやかなビートに乗ってラップする「Pleasure Drop」や、「Mo'Funky(pt.1)」から「MO'DUB」にかけての熱さはただごとじゃない。複雑なリズム・アレンジの「South Central Rock」や、ブルージーにして気の抜けたかのようなハープの音が響く「Midnight」も耳を引く。出口なしの地下のライヴハウスで聴いてるような錯覚を起こさせる暑苦しさ。何言ってんだか分かんないけど言葉を矢継ぎ早に流し込んでくるのも気持ちいいやね。



ズボンズ "Welcome back,ZOOBOMBS!" (Emperor Norton)
 「THE JAPANESE FUNKY HARDCORE NO.1」とはよく銘打ったもんだ。ファーストとセカンドから編集された、ズボンズのアメリカ盤。

 ギター暴れまくりで、ステージでコードにこんがらがりながらも叫んでそうな白熱プレイは、耳に悪そうなほどだ。でも、テクノっぽい「Flat-Top」や暗くラップする「ESTEL」もあるんだから、最初っから芸域は広かったんだな。

 出色なのは、パーカッションに導かれて始まるラップがカッコ良すぎる「Jumbo」。黒っぽさプンプンとを漂わせながら、途中で暴発までするテンコ盛りの展開が最高だ。これだけのために買っちゃえ。