Vol.17 (side C) MAY/1998



money mark "push the button" (MO WAX)
 黒っぽいサウンド要素を、洒落たコーティングで包んだ詰め合わせ。P-FUNKの打ち込み解釈みたいな曲から始まり、ブルージーな「All The People」、エレクトロ魂をみせる「Bossa Nova 101」、サルサの「Crowns」、ドラムンベースの「PowerHouse」と詰め込まれ、目まぐるしいまでの展開が最後まで続く。何だか分からない小品が入ってるのは、そんなポップさへの照れ隠しだろうか。ドラムの音色感覚がかなり気持ちよくて、徹頭徹尾貫かれた快楽原則至上主義が清々しい。



伊波智恵子 meets 栗コーダーカルテット "おもろうた" (nafin)
 沖縄の女性歌手のアルバムで、編曲を普久原恒勇と栗コーダーカルテットが半分ずつ担当している。聞き物はやはり栗Qのアレンジと演奏だが、音楽的な引き出しが異常に多い栗Qだけあって、基本的には沖縄なんだけど、どこか違う土地の音楽といった感じの不思議な雰囲気を生み出している。

 伊波は上手いけれど、歌にふくらみがあるタイプの歌手ではない。その分、ドラムの柔らかな響きが歌を包む「花ぐるむ」や、広がりのあるサウンドの「島々清しゃ」でのアレンジは成功していると思う。栗Qがライヴで他のアーティストと演奏する時のような意外なアレンジは残念ながらあまりないが、リコーダーを始め、明らかに沖縄音楽とは文脈の違う音で彩っている。三線をバックに歌うという定型から外して、歌としての魅力を引き出す試みと言えそうだ。



"タヒチの夜" (avex)
 テクノで大合唱する曲から始まる「タヒチの夜」は、その名の通りタヒチ音楽の編集盤。聴き通すといやがおうにも南洋気分になって、何もやる気が起きなくなる恐ろしいアルバムだ。ハワイアンに通じるような南洋っぽさに満ちていて、強烈な個性は感じられないけれど、のどかなポリネシア風味が楽しめる。ミドル・テンポの曲が大半を占めてるのもお国柄か。シンセ音が安っぽくても、それも味だと思わせる雰囲気がある。



菅野よう子 "COWBOY BEBOP O.S.T.1" (VICTOR)
 あまりのスタイリッシュさが話題になったアニメ「カウボーイビバップ」のサントラ盤で、音楽担当は菅野よう子。オープニング曲「Tank!」のカッコよさは、スパイ映画やルパンの音楽の影響を受けているようだけど、他の楽曲も雑多なまでの異種交配ぶりだ。

 ブルージーというかブルースそのものを狙った「SPOKEY DONKEY」には、ブルースハープの大物・妹尾隆一郎が参加。ギターは元ティポグラフィカの今堀恒男だ。スパンク・ハッピーの菊池成孔がサックスを吹く「PIANO BLACK」は、打ち込みのせわしいリズムにピアノとサックスが絡む。途中からスカになる「BAD DOG NO BISCUITS」やエスニック路線の「The EGG and I」など、どれも趣向の凝らされたサウンドだ。中でも「SPACE LION」は、エスニックなパーカッションとコーラスが宇宙的なイメージを生んでいて気持ちいい。

 もっとも、どれも継ぎ接ぎの音楽にすぎないと言えばそれまでかもしれない。それでも映像に負けてないほどにイメージを喚起させるのだから、サントラとしては成功作だろう。このキッチュさは楽しまなきゃ損。