Vol.15 (side B) MAR/1998



大熊亘ユニット "シカラムータ" (RESPECT)
 ソウルフラワーユニオンのクラリネット奏者のリーダー作。他のメンバーは、桜井芳樹・坂本弘道・関島岳郎・植村昌弘という猛者揃い。ゲストで太田恵資も参加している。

 大熊のオリジナル曲以外にも、チンドン・ネパールやトルコの民謡が収録され、汎ユーラシア的な音楽が展開される。しかしそれは安直に郷愁を誘うものではなく、巷に流れる音楽を求め続けているかのような現代性があり、リアルな感触を持っている点で感動的。変拍子や即興などのスリルが溢れるバックの演奏と拮抗するクラリネットの音色は、しなやかにして強靭だ。

 かつて大熊も参加した、篠田昌巳の「コンポステラ」に通じる精神性と音楽性も感じる、カテゴライズ不能かつ無用な作品。



TORTOISE "TNT" (THRILL JOCKEY)
 ドラムが打つ複雑なリズムがフェイド・インしていきて、そこへ不安定なギターが鳴り始める。ゆらぎを感じさせる1曲目から冒頭の数曲には、リズムの組み方や音を入れるタイミングなど、ジャズっぽいニュアンスを感じた。後半はもろテクノな曲も出てくるが、ミニマルなビートは、テクノよりも現代音楽っぽい。一歩間違えれば根無し草の退屈な音楽になってしまいそうだが、特定のジャンルに頼ることなく心象風景を描き続けるようなサウンドには、微かに狂気もちらつく。アルバム後半のビートが前面に出た曲の方が異色な気さえするほど静謐なトーンに包まれた、淡い色使いの絵画のような音楽だ。



"ANGEL OF LIFE IN A PHYCHIC WASTELAND" (Eerie)
 世界のキテレツ音楽を集めたオムニバス盤。暴力温泉芸者やSTOCK,HAUSEN & WALKMANも収録しているが、それ以外は名前も聞いたことの無いミュージシャンばかり。これを買ったWAVEでこのCDのポスターをもらったんだが、金髪ギャルが包丁持ってニッコリという頭のとろけたデザインだった。裏ジャケには「I HATE MUSIC」とか書いてある。

 哀愁だけが突出したしまったような曲、ジョン・ゾーンもどき、異世界ダウナー系、子供と合唱、回転数UPなど、特殊な世界観が渦巻くサウンド群が詰まっている。インチキ民族音楽含有率も高い。Violent Onsen Geishaこと暴力温泉芸者は、虚ろなままどこかに消え去ってしまい、STOCK,HAUSEN & WALKMANは豚のイビキみたいだ。

 なんだかんだ言っても、基本的にはポップスのフォーマットを抜き出せない曲もあるし、小手先っぽい曲もあるが、各曲の抱える業の深さ(あるいはダメ度)はかなりのものと感じられるので、全体としてはOK。



"綿の国星/大島弓子1" (VIVID)
 80年に発売された「綿の国星」イメージアルバムの再発盤。鈴木慶一がプロデュースし、ムーンライダーズが作曲と演奏、松尾清憲がヴォーカルを担当している。今聴くともろにニューウェーヴ的なサウンドがツラい面もあるが、作曲したメンバーの個性がそれぞれ色濃く出ていて面白い。企画盤には違いないが、ライダーズの「モダン・ミュージック」や「カメラ=万年筆」あたりが好きな人なら充分楽しめるだろう。

 「ねむれない夜」では、デビュー前の松尾清憲のボーカルも勢いが印象的。全作詞を担当している大島弓子の、簡素にしてイマジネーションに富んだ歌詞もかなりいい。正直言って驚いたほどだ。

 現実問題として、「綿の国星」の世界を表現しているかというと疑問符が付きそうだが、大島弓子VSライダーズ・松尾清憲といった才能のぶつかり合いが記録されているアルバム。