Vol.11 (side A) NOV/1997



こなかりゆ "OOPS!" (POLYSTAR)
 海外育ちのシンガーソングライターの3作目。一見華奢に見えるが、実はデビュー当時からMarc RibotやPeter Schererなど、マニア驚愕のニューヨークのアヴァンギャルド人脈と共演しているなかなかの猛者だ。

 なにより凄いのは、硬質な中にも昂揚感を含んだフリージャズ的な要素の強いサウンドに対して、彼女の存在感が全く負けてないこと。外国勢とのセッションといい、それと対等に渡りあう才能といい、若き日の矢野顕子を連想してしまった。

 また、ポジティヴな歌詞といい、とにかく度量のでかさがアルバム中に全開だ。「スケールでかく、愛情太く、ウエスト細く」なんて歌詞も納得。なんか自由に泳ぎ回る魚みたいな人で、そんな彼女に振り回されてみたくなってしまった。いかんいかん。



COMMON "ONE DAY IT'LL ALL MAKE SENSE" (RELATIVITY)
 COMMON SENSE名義の前作も、ジャズネタが印象的な作品で愛聴したが、この新作もまた渋い。小粋なサンプリング、ユーモラスなコーラスなどもあるが、やはりメインは、音数の少ないバックを紡ぐようなラップだろう。

 De La Soulが参加した5曲目は、音響的にも独特。ピアノのループをバックにラップする7曲目は、朝の公園のような穏やかな雰囲気が新鮮だ。アルバムを通して聴くと、額に掛けられた古い写真を眺めているような気分になる。

 洋物のラップのアルバムを買ったのなんて久しぶりだったが、僕のように洋物のラップから遠ざかった人間にも、ラップも含む独特のサウンド構築が楽しめた。



CORNERSHOP "WHEN I WAS BORN FOR THE 7TH TIME" (LUAKA BOP)
 在英インド人の音楽というとバングラ・ビートを連想する向きも多いだろうが(もう皆忘れてるか)、彼らの場合ははるかにターンテーブル指数が高い。つまり比べ物にならないくらいに洗練されているのだ。アートワークもカッコよすぎる。

 アタマの太いベースを聴いただけでもヒップホップの影響下にあることはうかがえるが、その一方でお約束のシタールやタブラも導入した、ツボを押さえたインド風味も忘れない。さらに8曲目「WHEN THE LIGHT APPEARS BOY」では、インドの伝統的なブラス演奏に乗せて、なんとALLEN GINSBERGが詩を朗読し始めて意表を突く。しかしこんな奇抜なマネまでしながらも、全体を通すと見事なまでにポップなのだ。

 民族的アイデンティティーと同時代性の両立という点では、ワールドミュージック・ファンも要チェック。と思ったら、しっかりDAVID BYRNEのレーベルから出ていた。



ADAM F "COLOURS" (BMG)
 冒頭のジャズの匂いに満ちたサウンドにいきなり肩透かしを食らわされたが、次第にドラムン・ベースに変わっていく展開にさらに驚かされた。テクノがジャズ本来の前衛性を受け継いでいることは多くの人が気付いていることだが、ADAM Fもまた、解体と再構築を同時に行っているアーティストだ。

 そしてテクノはテクノでも、根幹の部分が他と違っていて、かなりルーツ志向だ。しかしジャズやR&Bへの愛情に満ちていても、それに溺れることがない。クールではあるが重心は太い。TRACY THORNを迎えた歌モノでも、それがはっきりと伝わってくる。

 RONNY JORDANが参加したタイトル曲に、「ACID JAZZ」なんて懐かしい言葉を思い出した。



栗コーダーカルテット "栗コーダーのクリスマス" (METROTRON)
 木管の暖かな音色は冬によく似合う。いや、春でも秋でも似合いそうなんだけど、冬には一番暖かみが引き立ちそうだ。そして本作に参加した駒沢裕城のスティール・ギターは、体感温度をさらにUPさせてくれる。

 スタンダード・ナンバー、グリーンランドの讃美歌、オリジナルなど、ジャンルを越えた様々な選曲は前作同様。見方を変えれば、原曲を咀嚼する能力が試される選曲でもあるわけだ。

 白眉は5曲目の「リトルドラマーボーイ」。クリスマスの定番曲に、いきなり太い根っこが生えてしまったかのような重厚さに驚かされる。アジア各地のブラス曲を集めた「FROZEN BRASS」というオムニバス盤があったが、それを連想してしまうほど土の匂いがする楽曲へ変貌してしまっている。また、「I Want to be a Christian」の枯れた味わもいい。他の曲と音質が違う点にも、彼らのこだわりがうかがえる。

 クリスマス・アルバムってのはたいてい楽しさとか厳粛さに流れがちだけど、栗Qの場合は「深い」。非キリスト教国だからこそ生まれ得たクリスマス・アルバムだろう。

 抜群の音楽的基礎体力を見せ付ける栗Q、まだまだ底力を見せてくれそうだ。