Vol.5 (side B) MAY/1997



電気グルーヴ "A" (KIOON)
 遂にここまで来たか。そんな感慨に勝手に浸ってしまうほど、このアルバムはよく出来ている。ノンストップの展開、各曲に埋め込まれたアイデア、テクノの枠を飛び越えたサウンド。

 ただそうは思っていても、聴き通すと異常に疲れる。頭の奥にしこりが出来た気分になる。これまでピエール瀧を邪魔だと感じてきた僕だが、ここまで隙がないと「DORAGON」の頃が懐かしくもなる。

 そんな不満も持ちながらも聴き返してしまうのだから、こちらの負けだ。とにかく音のひとつひとつが気持ち良すぎ。安易にドラムン・ベースに展開しないのも好きだ。



テイ・トウワ "SOUND MUSEUM" (east west)
 細野晴臣に森高千里など、ゲスト陣でも話題を呼んだソロ第2作。こんなに研ぎ澄まされた音楽センスの人は、普段何を聴いているのだろうと疑問に思ってしまった。

 僕は大のハウス嫌いなのだが、もはや独自の音世界に突っ込んでいる彼は別格。耳障りな音を生かしたベースの4曲目や、7曲目以降のテクノ→森高ループ→ボサノヴァ→ジャングルと目まぐるしく変化する展開がいい。

 バカでかいムービー・ファイルなどが入ったCD-ROMはお得だが、ジャケットが厚すぎてケースに入らないのが日本盤の難点。



ORCHESTRE NATIONAL de BARBES "en consert" (TAJIMAAT)
 「ORCHESTRE NATIONAL de BARBES」は、フランスのアルジェリア系移民のバンド。このCDは、パリで収録されたライヴ盤だ。

 電気楽器も加えた編成だが、音楽は意外と伝統重視。しかし、コーラン風のアカペラから始まる曲もある一方で、疾走感に満ちた曲やレゲエDJが入る曲もあって、やっぱり移民のバンドだと気づかせてくれる。ブラスを含む演奏の瑞々しさも印象的だ。

 過去と現在、アルジェリアとフランスが交錯するスリーヴのデザインも素晴らしい。



DAVID BYRNE "Feelings" (LUAKA POP)
 実は大好きなんだ、デヴィッド・バーン。トーキング・ヘッズの全アルバムも彼のソロアルバムも、もちろん全部揃えている。ただトーキング・ヘッズ解散後の彼は、ワールド・ミュージックへの傾倒がイマイチ功を奏さず、結局ロック色の強かった前作「DAVID BYRNE」が一番まとまっていた、という迷走状態の印象が強かった。

 そしてこの5年ぶりのアルバムである。2曲目「MISS AMERICA」を聴いただけで感動してしまった。「REI MOMO」以来のカリブ音楽との格闘に、遂に決着がつたのだ。エレクトロともいえる電子音と、ラテン音楽の要素が違和感無く同居してるじゃないか。最も「ワールド・ミュージック的」な8曲目「DADDY GO DOWN」も、様々な音楽要素が見事な混沌を生んでいる。もはやネタ元が何か判然としないのだ。 他の曲も、年月がかかっただけあって、メロディーが冴えまくっている。どれも非常にポップだ。民俗楽器の使い方も、民俗楽器を使うこと自体が目的ではなく、あくまで曲を生かすためという印象。またドラムン・ベースの影がちらつく部分もあり、時代の音への色気も消えていない。

 プラモデルのバーンを使ったデザインや、角の丸いジャケットなど、ひねくれぶりも相変わらず。こんな生き生きしたバーン、久しぶりじゃないだろうか。この調子で次作もガンガンやって欲しい。



Prefab Sprout "Andromeda Heights" (SONY)
 発売の情報を目にした時、にわかには信じられなかった。僕と彼らの出会いとなった「JORDAN:THE COMEBACK」以来、実に7年ぶりのアルバムなのだ。いつかは出るとは思っていたが、現実にアルバムが届くとなると実感が持てなかった。

 不覚にも、1曲目「Electric Guitars」を聴いただけで涙しそうになった。ストリングス・管楽器・コーラス…奏でられる音のどれもが雪の結晶のように美しい。時代の音は少ないが、それでも古さを感じさせないのは、もっと普遍的な「音の艶」を獲得しているからだろう。PADDY McALOONが長い年月をかけて紡いだメロディーの良さは、もはや言うに及ばない。

 かつての恋人同志が、別れた今もこうして一緒に音楽を奏でている。喜びも悲しみも、人生のすべてを吸い込んだからこそ生み出せる美しさがここにはある。

 このアルバムの美しさは、ジャケットに写る摩天楼が見事に表している。見上げた摩天楼の美しい灯り、それは人々の喜びや悲しみそのものなのだ。そんなクサい言葉も、このアルバムの余韻に身を任せている時には言えてしまう。

 また7年後でもいいから、この至福を再び味わわせて欲しい。