CD REVIEW Vol.39 (side B) MAR/2000



Nona Reeves "LOVE TOGETHER" (WANER)
 なんと筒美京平のプロデュース。この単純明快な曲のどこら辺をプロデュースしているのかは分からないのだが、無茶なほどのキャッチーさは御大の影響かもしれない。ギターの刻み方、太いリズム、うねるストリングス、ところどころに入るブラスなど、これでもかというほど70年代ディスコ・ソング。一度クラブでも聴いたけど、そうした機能性はバッチリだ。終盤のボーカルとコーラスの掛け合いで、「吹き飛ばしてハートブレイク!」なんて歌っているのにも痺れた。



椎名林檎 "勝訴ストップ" (東芝EMI)
 感服。前作がミリオンセラーになるほど売れて、スキャンダルが報道されるほど本人にも注目が集まっている中で、椎名林檎のパブリックイメージをなぞるのではなく、さらに表現が深化した作品を生み出すとは。カートとコートニーの名が「ギブス」には出てくるけれど、たしかにこれはロックだ。歌謡曲を連想させるような側面は影を潜めていて、浅井健一と山本ムーグも参加したサウンドはかなりの音圧。アルバム全体を包む実存への不安は、彼女の音楽の聴き手が抱える不安とまさに共振していそうで、このアルバムも熱狂的な受け入れられ方をするだろうと確信する次第。



YOU THE ROCK "THE PROFESSIONAL ENTERTAINER" (AVEX)
 99年10月に発売された3作目、でも聴いたのはそれから半年近く経ってから。B-BOYぶった日本人ラッパーはどうも見ていて恥ずかしいけれど、スタイルばかり求めるのではなく自分の語るべきことを第一にしてラップしているからYOU THE ROCKの表現はリアルだ。器用そうじゃないのに真摯で、覚悟を決めて身体を張っているかのような彼のラップは素晴らしい。

 SHINCO・TSUTCHIE・DEV LARGEらによるこのアルバムのサウンドは、刺激に溢れているわけではないけれどヒップホップとしての充実度は高く、YOU THE ROCKのラップもそれに拮抗する逞しさだ。ひとつひとつの言葉を内から押し出す強さが違う。タイトルの通り楽しい「超楽C-E-Z」もいいけれど、最高なのは「ROCKY ROAD(友情BBS)」。修羅場をかいくぐっても前向きなこのタフさに出会える、彼のファンの中学生や高校生は幸せだと思うよ。本当のことを言うと、僕も音楽に元気づけられるなんて経験を久しぶりにしたんだ。



KAHIMI KARIE "once upon a time" (POLYDOR)
 THE OLIVIA TREMOR CONTROLとの共演盤なんだから、カヒミもすごい度胸だ。基本的にはポップスをやろうとしているものの、やはり妙な和音の崩れ方をしたりコラージュが入ったりで次第に脱線していくのは、いつものTHE OLIVIA TREMOR CONTROLそのまんま。「lost in a parts nightclub」はヨレた演奏とコーラスが面白い味わいだ。

 そして問題となるのはカヒミの声質とバックのサウンドとの相性なのだが…混ざりそうで混ざっていない。でもそれはそれで面白く、オモチャの楽器の演奏で歌ったカヒミのFANCY FACE GROOVY NAME時代を思い出した。いや、本作はもっと異物感が強いけど。



Asian Dub Foundation "Community Music" (VIRGIN)
 インド系イギリス人たちによる強烈なミクスチャー・ラガ・ロック。クラブ・ミュージックを吸収したハードコアなロックにラガマフィンを乗せたその音楽は、インドからイギリスそしてジャマイカまで繋がる、血の気の多い世界音楽だ。サンプリングとおぼしきインド旋律が使われる「collective mode」、タブラを意識したパーカッションが次第にジャングル並みの早さで叩かれていく「crash」、西アジア的なコブシ回しのボーカルの入った「taa deem」あたりが聴きどころ。そしてどの曲も恐ろしくアッパーだ。そのシャープな暴走は政治的なメッセージがあるからこそだろうが、決してメッセージが主で音楽が従になったりはしていない。