CD REVIEW Vol.38 (side B) OCT/2000



小島麻由美 "Songs For Gentlemen" (PONY CANYON)
 ライヴアルバム「Songs For Gentlemen」はジャケットの良さもあって期待させられたが、ちょっと肩透かしを食らうことに。ステージ上で女王のように振る舞う彼女を予想していたら、思いのほかよそよししい印象なのだ。「スキャットブルース」のようなそれほど歌い上げない曲だとまだいいけれど、キャバレー歌謡テイストの曲ではギラギラした面があまり再現されていないのが残念。「おしゃべり!おしゃべり!」での異様なエフェクトも、それがないと聞かせるには弱かったからかもしれない。初ライヴが97年というのだからステージ慣れしてないのだろう。その分、フルート・ウッドベース・ビブラフォン・ドラム・ギターという編成によるバックの演奏の上手さと、小島麻由美のアレンジ能力の高さがわかるのは皮肉だ。

 由紀さおりの「夜明けのスキャット」のカバーは、ブラス+レゲエでミュートビート風味。



The Beach Boys "BEST OF THE BROTHER YEARS" (CAPITAL)
 遂に出たブラザーレコーズ時代の編集盤。いや、「遂に」という表現はオリジナル・アルバムが全部発売される時に使うべきだな。70〜86年の音源を収録したもので、山下達郎もかつて自主制作盤の題名に借用した「ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY」や、「THIS WHOLE WORLD」「SURF'S UP」など、友達の家のアナログで聴いて垂涎した名曲の数々を聴くことができる。もうメロディーとハーモニーにただ夢心地で酔うばかりだ。「'TIL I DIE」を聴いていると、こっちが死にそうになるしな。「CALIFORNIA DREAMIN'」は、ママス&パパスのバージョンよりも好き。



KHALED "KENZA" (BARCLAY)
 アルジェリアの音楽・ライの代表的な歌手の99年作品。かつてフランス人であるマルタン・メソニエのプロデュースで「Kutche」という名作を生み出したように彼の活動はアルジェリア国内にとどまるものではなく、このアルバムでもカイロ・パリ・ロンドンなど録音された場所の多彩さに彼のスタンスの独自性が現れている。

 KHALEDの魅力と言えば、ライではない曲を歌っても強烈なアクを感じさせるコブシ。それを厚いストリングスと現代化されたサウンドが包むわけだが、この手の音楽で気になることが多い打ち込みの古臭さはそれほどなく、特にリズムに対する配慮がうかがえる。細かいことを忘れさせるエネルギーがあるのも確かで、特に「EL BAB」や「DERWICHE TOURNEUR」はDJに使えそうなほどキャッチーなダンスナンバーだ。というか「EL BAB」は使った。



Pre YMO & Various Artists "InDo" (RE-WIND)
 話題になったYMOの発掘音源だが、坂本龍一は演奏に参加していないので「Pre」なのか。楽曲自体はつまらないわけではないけれど、当時の細野晴臣作品にしては抽象的でユルく、お蔵入りのまま忘れられていたのも納得できてしまう。オリジナル復刻バージョンである「InDo 1978」には作り込みが足りない印象を受けたのだが、しかし「InDo 2000」になるとその抽象的なサウンドからイマジネーションを広げられるようにうまく作り換えられていた。この辺の手腕は、細野晴臣がアンビエントを経由した成果かもしれない。

 リミキサー陣の中では、原曲のテイストをいかしながらダブ・ロックにしたてたaudio active、ずいぶんとすっきりした音に組み替えた4 Heroが耳を引いたが、原曲を大胆に離れて洒落たハウス・ナンバーにして唖然とさせてくれたMasters At Workに軍配を。



電気グルーヴ "VOXXX" (KIOON)
 お笑い込みのミュージシャンとしては、電気グルーヴはある世代にとって筋肉少女帯(僕は好きじゃないけど)に並んで影響力を持っているんではないかと思う。砂原良徳脱退後のこのアルバムは言葉の比重が再び重くなっていて、音楽に笑いを求める気のない僕は最初こそ引っ掛かりがないままだったが、やがてもうなんだかわからないほど文化コードが交錯していることに気付いてめまいがしてきた。正調テクノやソウルっぽい洒落たトラックがある一方で下世話で人間臭いネタも大量に振り撒き、そのくせアルバム全体の構成は見事。どういう図を頭の中に描くとこういうアルバムが作れるんだという疑問も、「edisonden」の炸裂するナンセンスに吹き飛ばされたのだった。