CD REVIEW Vol.37 JAN/2000



Ash Ra "NEW AGE OF EARTH" (VIRGIN)
 歪んだサウンドによるアヴァンギャルドな音楽かと思ったら、ミニマルっぽい音の連続で意外だった。でもこのサウンドなら、大仰なタイトルと神々しくもあるジャケットに合っていて納得。ギターよりもシンセサイザーの音が前面に出ていて、「OCEAN OF TENDERNESS」などはアンビエントっぽいが、他の曲ではアンビエントというには動的なエネルギーを感じさせる。21分に及んで展開される「NIGHTDUST」を最後に聴いて、なるほどこれはプログレの文脈にある音楽なのだとも気づいた。



Soft Machine "THIRD" (EPIC)
 カンタベリー系に疎い僕にとっては、Robert Wyattがドラマーとして在籍していたという程度の知識しかないバンドの70年作品。しかし、ドローンとしたフリージャズのような演奏から緊迫感のあるフレーズが立ちあがっていく「FACELIFT」のかっこよさに興奮させられるまで、そう時間はかからなかった。緩急折り混ぜて展開する「SLIGHTLY ALL THE TIME」は、まさにジャズロック。オルガンの響きに彩られた「MOON IN JUNE」は比較的ロック寄りだが、それは魅力の無さを意味しない。サイケデリックでジャズでプログレな「OUT-BLOODY-RAGEOUS」まで、20分近い長さの4曲を聴くことになり、たっぷり頭の中を掻き回された。



The Meters "The Meters" (A&M)
 こんなニューオリンズR&Bを聴きたかったんだ!と感動させられてしまった。CD再発されたばかりらしい69年のデビューアルバムで、ボーナストラックを2曲収録。リズムには硬さと丸みが絶妙のバランスで同居していて、演奏は単純のようでニュアンスに富んでいる。たった4人での演奏はカッチリ噛み合いつつも、各人のプレイはどれも個性的。「LIVE WIRE」は、カーネーションが「オートバイ」でサンプリングした楽曲で、原曲も最高の気持ち良さだ。どの曲も3分前後だけど、濃度が高くてしかも洗練された曲ばかり。



キリンジ "アルカディア" (WARNER)
 何でも対象化して一歩置いてしまうかのような彼等にしては珍しくエモーショナルな楽曲だ。歌詞の字面の美しさと裏腹に、歌と演奏にはささくれだった雰囲気があり、フルートが渋くアクセントを与えている。けれどより気に入ったのは、兄・堀込高樹による作品であるカップリング「千年紀末に降る雪は」の方。弟・泰行の「アルカディア」が生真面目さをたたえているのに対して、兄の方は紳士的ながら何かを隠しているかのような含みがあり、相変わらず飄々とした世界だ。堀込高樹の作る歌は、歌詞とメロディーが融合した時に喚起するイメージがより深く広いように思われる。「千年紀末に降る雪は」も、歌詞カードを読むまではサンタクロースの悲哀をテーマにした歌だなんて気付かなかった。



CELLOPHANE "WANDERING" (POLYDOR)
 試聴した段階で購入を決意せざるをえないブリティッシュ風味ギターポップ。こういうのに僕は弱いのだ、1曲目の「My Misery Gun」のメロディー展開を聴いただけでやられてしまった。楽器の鳴りやコーラスもマニアくさいが、古臭くはないのがポイント。ボーカルもまたいい声をしている。高野寛の歌声、松尾清憲のメロディー、初期カーネーションの瑞々しさ…そんなものが次々と連想されるポップスの連続。カーネーションの棚谷祐一がプロデュースで参加しているのも納得だ。曲のバラエティーのわりに個性は強くなく、もっと耳に引っ掛かる言葉が歌詞に増えてほしいところだが、バーンと売れて欲しいバンド。



くるり "図鑑" (SPEEDSTAR)
 ジム・オルークが5曲でプロデュースと聞いてどうなっているのかと思いきや、彼が参加していない楽曲でも実験的なサウンドが展開されていた。抒情と衝動がひとつになったダイナミックさがくるりの大きな魅力だったが、「ミレニアム」のような変化球もあるし、音響派もどきの「ABULA」も。「ロシアのルーレット」のラストなんて、気の触れたようなサウンドだ。でもジム・オルークが参加した「惑星づくり」は、ドラムの響きで曲を引っ張っていく力技が光っていて、その辺はやはり格が違う。「屏風浦」で、そっとピアノの不協和音をすべりこませているのも心憎い。最後の「宿はなし」には自然な日本っぽさがあり、しかもこの曲ではソウルフラワーユニオンの奥野真哉とジム・オルークが一緒になるという予想外の事態が起きていた。前作「さよならストレンジャー」に比べたら散漫なほど雑多なのにくるりの個性が貫かれているのは、バンドの勢いのなせる技だろう。