エヴァに引用された精神科医・R.D.Laingについて




 エヴァ第弐拾伍話「終わる世界」のサブタイトル「Do you love me?」は、R.D.Laingの同名の著作から引用されたもの。また、その直訳である「私のこと好き?」という言葉は、映画版の広告でも多用された。
 R.D.Laingは、1927年イギリスに生まれた精神医。彼の「Do you love me?(邦題:好き?好き?大好き?」は、その詩とも戯曲ともとれる独特のスタイルで人間心理を描き、表題作「好き?好き?大好き?」では、恋人同士の子供っぽい戯れを描きながら、同時に深層心理における他者依存や強迫観念を描いている。87年に死去。
 恐らく庵野監督は、R.D.Laingに影響を受けた1人だろう。また、その他にも多くの優れたアーティストたちが、彼の影響を受けている。
 「好き?好き?大好き?」の全文はこちらに。


「好き?好き?大好き?」(みすず書房・村上光彦訳)

 ちなみに、80年に出たMORGAN FISHER編集のオムニバス盤「miniatures」には、熱狂的なジャズファンだという彼のピアノ演奏が収録されている。息子さんが、横で歌ったり叩く音を出してたりして、ほのぼのとした味わいの1曲。


「miniatures」


岡崎京子


「好き好き大嫌い」

「チワワちゃん」

 現在交通事故のため療養中のマンガ家・岡崎京子は、2度R.D.Laingを引用している。89年の単行本は、その名も「好き好き大嫌い」。そして、この単行本に収録された短編「エピローグのようなもの」は、執拗な問いかけとそれへの答えという「好き?好き?大好き?」の形式を引用しながら、恋人同士の関係に潜む「揺れ」や「軋み」を浮き彫りにしている。
 そして、94年に発表された「好き?好き?大好き?」(「チワワちゃん」収録)では、同じくR.D.Laingを引用しながらも、恋人同士という2つの個体が信頼し合うことへの絶対的な不信が表現されている。それは、「エピローグのようなもの」に比べて、人間という存在に対する彼女の「闇」が、さらに深まっていることを感じさせるのだ。
 ちなみに、彼女の最高傑作「リバーズ・エッジ」で引用されているのは、William Gibson。こうしたジャンルを越えた視点と、マンガという枠を越えてサブカルチャー全般に大きな影響力を持っていた彼女の回復を願いたい。


佐野元春


「FRUITS」

 今や日本のロックの大御所(イマイチな表現だが)でありながら、雑誌「THIS」の発行や、独自ドメインによるホームページ運営と、現在も意欲的なメディア表現を試みる佐野元春。
 彼の96年のアルバム「Fruit」には、R.D.Laingに捧げられた曲が収められている。単純なフレーズを繰り返す歌詞は、まさに「好き?好き?大好き?」のアンサー・ソングといった趣である。
 この曲の歌詞は、彼のページのここで読むことができます。



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