Vol.6 1998



「MANGA EROTICS」Vol.2 (太田出版)
 巻頭カラーは砂の「キャンペーンガール」。売春ではないセックスは女にとって可能だろうかとキャンギャルを通して問い、今回もインテリ全開だ。意外と良かったのは榎本ナリコの「Iron Maiden」で、設定自体は男子生徒と女教師というありふれたもの。しかし、女教師のサディスティックさの原因となった過去の出来事を描いて、切なくラストをまとめる手腕が光っている。駕籠真太郎の「大蒐集」は、惜しげもないネタのつめ込み方とテンポの良さ。しかもどのネタも悪趣味ときている。担当医師に騙されていることも知らずに患者の少女がセックスする、玉置勉強の「永遠の愛」は容赦無しの残酷さ。壊れてる少女の表情とか、人間のダークサイドを描くことに関してはやはり卓越している作家だ。幼女レイプ描写が個人的に全く駄目で、町田ひらくはあまり好きになれなかったのだけど、「MOUSE TROUBLE BLUES」は彼の作品で一番気に入った。「トムとジェリー」を下敷きにしているものの、ジェリーは少女でトムは男。性が絡んで目覚めてしまった動物の本能が生む悲劇は、最後まで乾いているのだ。
(JUL/26/99)



「Super FEEL」VOL.1 (祥伝社)
 最近増えた擬似「CUTiE COMiC」学級に、もうひとり転校生。「Super FEEL」VOL.1は、安野モヨコが表紙なんだけど、宿便とかバストアップとかの広告があって、どうも本家と雰囲気が違う。

 古屋兎丸の「いちばんきれいな水」は、涙を誘う1歩手前で情感を抑える淡さが素敵。外人街の気味悪さは彼らしいけどね。三原ミツカズの「空気の中を抜ける空」と小林ユミヲの「cherish」は、ともに死が絡む切ない系。こういうのに僕は弱い。

 そして重要なのは、桃吐マキル+福実未ノアルの「クサイモンフミの恋愛論」を掲載している点。暴挙ですな。福実未ノアルは「福耳」だったのをまた名前変えたのかよとか、ユニコーンの別ユニットで「クサイモン&ワキガーファンクル」ってのがあったねぇとか、読む前からいろいろ考えさせられて困る。作品自体では、キャラがいるコマとは別のコマにフキダシが侵入して話を進行させてる点が新鮮だったけど、そんなことより、今後も彼らの作品を商業誌で読めるようお祈りする方が忙しくなってしまった。

(MAY/18/99)



「COMIC CUE」Volume SIX (イーストプレス)
 今回の集は「手塚治虫リミックス!」。そのテーマと関係ない作品が混ざってるのは別に構わないんだが、以前と比べ、どうもガツンとかましてくる作品が減ったのは気になる。創刊編集長だった江口寿史が、編集長を降りた上に今回は作家としても参加せず、完全にいなくなってしまったのも淋しい。

 その今号の重要作は2つ。黒田硫黄の「メトロポリス」は、またしても分けのわからないほどのデカい展開を見せ付ける。どこか乾いているキャラも魅力的で、物語中でガンガン人を死なせる残酷さもそれと無関係じゃないはずだ。全然違う絵柄なのに手塚キャラを混在させてしまうのも力技。この作品には、針が振り切れ過ぎて少年マンガに戻れなくなった少年マンガともいうべきダイナミックさを感じた。

 予言をするため作られ、未来に対して願うという行為を知らないロボットの悲しみを描くのは、地下沢中也の「予言者ピッピ」。この作品は手塚作品には関係無いフリーテーマだ。本編最初の3ページが本当に巧い。

 手塚治虫が生きていたらマックを使ってたのかなーと思わせられるのが、筆致がそっくりの田中圭一。しりあがり寿の「火の鳥 in 弥次喜多」では弥次喜多と火の鳥が競演、両作のテーマが重なっていることを示している。おおひなたごうの「七色いんこ」はオチが見えるけど、そのベタさがいい味。島本和彦の「マグマ大使」はマニアックにして血管が切れそうな熱さ、あるいは暑苦しさだ。細野晴臣×手塚るみ子の対談もある。

 水野純子「ドリームタワー」は、「PURE TRANCE」の続編。相変わらず有機物と無機物の境が無いような絵ですが、以前よりキャラの内面に突っ込んでいる。さっそく一人頭が狂ってるし。

(MAY/18/99)



「COMIC anan」anan5月20日臨時増刊号 (マガジンハウス)
 今月は「COMiC CUTiE」の発売が早いなーと思ったら、「COMIC anan」って新雑誌だった。中身は去年出た「COMIC P!」を一部受け継いでいて、高口里純はその続き、江口寿史に至っては同じものが掲載されている。他の作家は、安野モヨコ・吉野朔実・やまだないと・魚喃キリコ・村田順子・冬野さほ・松田奈緒子・亜月裕。当然ながら「COMiC CUTiE」に比べ専門学校度は低く、全体として落ち着いているけれど、突出した作品がないのは残念。ベッドに入った子供たちの夢うつつを1ページ1コマで描いた冬野さほと、切なすぎでこっちの胸が痛くなるやまだないとは気に入った。
(MAY/18/99)



「MANGA EROTICS」Vol.1 (太田出版)
 「おっ、『COMIC CUE』の最新号が出てる」と本屋で思ったそこのあなた、ちょっと待った! それは太田出版から出た季刊誌「MANGA EROTICS」Vol.1だ。サイズが同じだし、南Q太・塔山森(=山本直樹)・やまだないと・町野変丸なんて作家のメンツも共通してる。他に町田ひらくや福山庸治もいる豪華さだ。そこにおける柳沢きみおのポジションは微妙なわけで。セリフを朗読すると凄いぞ。

 「エロティック・コミック」ということを意識したせいか、南Q太はいつもとノリがちょっと違っていて描写が露骨だ。塔山森はここぞとばかりに実験的、やまだないとはいつも通りにスタイリッシュで高水準。町野変丸は、いつもと同じ絵・同じ内容ながらマックを導入していて、脱力的衝撃を受けた。安彦麻理絵はもう芸風が完全に確立されちゃったようで、少し寂しい。福山庸治はもっと悪夢を。

 気に入ったのはビッグネーム陣よりむしろ若手(?)の方。駕籠真太郎の「大葬式」は、葬儀にかこつけて性欲を晴らさんとする人間が、迷路のような空間で先を争ってデッドヒート。しかも大混戦。テーマの異常さ、キャラ同士の入り組んだ関係なんかはパラノイア寸前の奇妙さなんだけど、そこをユーモアですり抜けていく。自己決定権やフェミニズム、資本主義についてまで考えながらアナル売春をしている大学生を描いた、砂(←これが作家名)の「セクスパレイト」も強烈。肉体とアカデミズムが卑猥な音を立ててぶつかり合うような物語だ。「フェミニズム・セックスマシーン」と絶叫してるもんなぁ。

 あ、実用性は期待せぬ方が良いかと。

(MAY/18/99)