Vol.3 1997



「ぱふ」97年12月号 (雑草社)
 かなり前からその名は知っていたものの、実はこの雑誌を買うのは初めて。一応マンガ情報誌なのだが、腰の細い男の子が好きな、やおい好きの女の子のための雑誌だと思って、今まで敬遠していたのだ。しかし今月号を何気なく手にしたところ、結構マンガの紹介もあるようなので買ってみることにした。

 たしかに「HOW TO 同人誌」なんて特集は面白かったが、やはり全体に内輪的な感覚を感じてしまうのも事実。なんといおうか、同人誌のフリートークの部分の空気が誌面全体に漂っているという感じなのだ。って、分かりにくい例えですな。とにかく「批評」とか「批判」とかの存在が許されないような世界で、ちょっと居心地悪さを感じてしまった。この良くも悪くも内輪的な空気についていけない人間には、やはり辛いものがある。

 裏を返せば、僕がこう感じるのも、こうした感覚が好きな人達にとっては完成度の高い雑誌である証拠なのだろうけれど。

(NOV/17/97)



「comnavi」Vol.1 (全研)
 これが創刊号の「コミック総合情報誌」。マンガの取り巻く現状を総合的に扱った雑誌で、巻頭特集はマンガのメディアミックスについて。「まんだらけ」の古川益三によるマンガ紹介は、読破するマンガの量が多いだけあってなかなか面白い。「COMIC GON!」がレトロ志向の面を持っているとしたら、「comnavi」はあくまで現状重視の雑誌言えるだろう。

 そしてこの雑誌の目玉は、400冊以上に及ぶ新刊レヴュー。でもこんなにあると、かえって選択が難しくなるんじゃないかな? 100点満点の採点も、評と噛み合ってない部分があっていまいち合点が行かない。この量じゃとりあえず書くだけで手一杯なんだろうし、質を基準にしてもう少しセレクションしてもいい気がした。

 とにかく情報量はかなりの多さで、マンガ好きなら買う価値はあると思う。ただ、チョイスされた情報から編集方針が見えてこないのが歯がゆい。間口が広い分、もっとディープなネタも欲しくなってしまうのは、マニアのわがままだろうか?

 あと、創刊記念の読者プレゼントが「モンキー・パンチの色紙」や「やくみつるが描くあなたの似顔絵」ってのは、かなりまずいセンスのような気がするのだが…。

(NOV/17/97)



夏目房之助「マンガはなぜ面白いのか」 (NHK出版)
 自身もマンガ家である筆者が、「その表現と文法」という副題の通りに、マンガの持つ構造について詳解した本。「マンガ学」のようなアカデミズムが求められるのは時代の必然であるとして、体系的な分析を意識的に試みている。そうした視点は呉智英の「現代マンガの全体像」にも共通しているが、描線・感情記号・吹き出し・オノマトペ・コマ構成など、マンガを構成する諸要素をより細かく取り上げているのが特徴だ。

 「マンガ学」なる看板を掲げているので一見大仰だが、実際のマンガを引用しての具体的な解説も多いので、肩ひじはらずに楽しく読める。何気なく読み流しているような表現に気付かされることも多いので、意外とマンガ家を目指している人が表現の幅を広げるのにも役立つかもしれない。個人的には、独特の世界を持つ少女マンガについて書かれた「少女マンガのコマ構成」や、最も繊細な感性を要求されるであろう恋愛マンガの表現の時代的変遷について解説した「恋愛マンガ学講義」が興味深かった。

 ただ気になったのは、マンガ表現と時代性との関連について触れた部分。高度成長期には、手塚マンガよりもゴルゴ13の感情表現の方がふさわしかった…という部分には首をひねった。他に数箇所こうした記述があるのだが、どれも憶測の域を出ていない点が残念だ。

(NOV/28/97)