Vol.1 1997



「諸君!」97年11月号 (文芸春秋)
 今まで極右雑誌というイメージがあって敬遠していた「諸君!」を買ってみた。執筆陣に大学教授がやたら多いのにも驚いたが、自由史観研究会のメンツによる「それはちょっと…」的な物言いが常識のようにまかり通っている点には、ある種のカルチャーショックすら受けた。結局、呉智英・小田島隆・大塚栄志による記事の方が安心して読めたりして。

 でも、「噂の真相」にせよ「諸君!」にせよ、こういう雑誌があった方が世の中面白いんだよね。付け加えるなら、両誌は思想的には全く逆に見えて、実は硬直度という点では似通っているような気もする。もうこれ以上はどうにも変化できないという停滞感が漂っているのだ。

 両誌とも、今頃になってもまだエヴァ批判が載ってたりする辺りにオヤジ臭さが出てるし。

(NOV/02/97)



「アウフォト」No.002 (新潮社)
 本屋でパラパラめくってみたところ、むさ苦しいぐらいに本当に写真ばっかりで、思わず気に入ってしまった。吉川ひなのやスチャダラパーなんかの有名人が撮った写真のほか、読者の投稿もかなりの割合を占めているのがこの雑誌の特徴だ。といっても、他の写真雑誌なんて買ったことがないから推測だけど。

 で、この読者投稿ってのがクセモノなのだ。まさに玉石混交で、安直なウケ狙いやナルシズムに首まで浸かったようなものもあるのだが、その場の空気をハッとするほどに伝えている写真もあって、少なからぬ衝撃を受けた。自己顕示欲丸出しの写真は論外だが、自然体を極めた作品や、あるいは自意識の巧みなコントロールに成功した作品は印象に残る。僕は写真を特に多く撮ることはないけれど、この教訓(なのか?)は他のあらゆる表現にも当てはまりそうな気がした。



「週刊アスキー」97年7月28日号 (アスキー)
 コンビニで週刊アスキーを手に取ると、「酒鬼薔薇をダーティーヒーローにするな」と題して、宮台真司と香山リカの対談が載っていた。あまりにも安易な顔合わせに、この2人が何を話しているのか気になって、思わず買ってしまった。

 確かに宮台真司がこの事件についてよく調べたうえで分析しているのは分かるし、香山リカも、新聞に載っているような表層的な世論を越えて、深い社会的洞察をしているのも分かる。しかし、費やされる言葉の数々や、提示される情報の量に比べて、驚くほど内容が無いのもまた事実だ。単に対談のまとめ方が悪かったせいかもしれないが、レム睡眠中の眼球のように展開が慌ただしく、散漫な内容だ。そこに、所詮は相対的な視点でしか話すことの出来ないこの2人のポストモダン的体質を僕は感じてしまった。

 むしろ、酒鬼薔薇と死体・猟奇・畸形などのジャンク・カルチャーとの関係を探った記事の方が興味深かった。特殊翻訳家の柳下毅一郎や、「危ない1号」名誉編集長の青山正明などの、「まさにその筋」の人達が登場。彼らの言う通り、酒鬼薔薇とジャンク・カルチャーを短絡的に結び付けることに意味なんて無いよなぁ。そして、犯罪報道の名を借りたマスコミの蛮行の方が、よほど「ジャンク」であることは間違い無いだろう。

 この「週間アスキー」の編集長は、「SPA!」や「PANJA」の元編集長だった人物なのだが、80年代的体質がこれほど誌面に出てしまっているのもある意味でスゴイ。社会的な問題を取り上げていても、歳相応に振る舞おうと背伸びをしている姿が露骨に見えてしまう感じだ。おまけに、マンガの連載が中尊寺ゆつこだし。

 今僕がインターネットを通して浴びるように享受しているこの「サブカルチャー」も、いつかはこんな風にみすぼらしい姿をさらすのかなぁ。いや、もうすでに?



「創」97年8月号 (創出版)
 「創」ってのは、本当に妙な雑誌だ。マスコミ業界誌のようだが、影響力は「噂の真相」ほどでもなさそう。その「噂の真相」と同じく、安っぽい紙に活版印刷というスタイルなのだが、広告はやけに大企業が名を揃えている。しかも、今日買った8月号の執筆陣は、鈴木邦男・松沢呉一・香山リカ・藤井良樹…とまるで「SPA!」。柳美里サイン会脅迫事件や日本マンガ市場といった特集にひかれて久しぶりに買ったのだが、なんかちくはぐな印象の雑誌だなぁ。

 その「創」8月号には、「『事件簿』の中の『酒鬼薔薇』事件」と題して香山リカが寄稿。もちろん話のつかみは、「エヴァの碇シンジと同じ14歳の少年が逮捕」。酒鬼薔薇逮捕はこの号の校了直前だったと編集後記に書いてあることからしても、とりあえず犯人逮捕についてだけは触れておこうという、いかにも取って付けた口上だ。内容的には、事件の分析の名のもとに、メディアや一般人が劇場型犯罪を待望し、進んで参加しているという現実を指摘している。これって、一読すると感心する人も多いのだろうが、僕はやはり首をかしげた。香山リカ自身、5月30日の朝日新聞では、脅迫状の的外れな分析をしているのに、そうした自身の言動への視点は完全に欠落しているのだ。他の精神医学・心理学の専門家のメディア上の言動を批判して、自分を差別化しようとしているものの、では結局彼女自身は?という点については、まるで見えてこない。いや、見せようとしない。

 こうした彼女の言説を読むと、結局「噂の真相」7月号の精神医学者・小田晋批判を受けての、一種の自己保身・自己弁護という気もしてきた。自己保身のために先手を打つ、トリッキーな確信犯なんて、なおさらタチが悪い。香山リカの持ついかがわしさへの疑念は、更に深まった。精神分析の厚化粧をしたメディア芸者、か。



「ユリイカ」97年5月号 (青土社)
 この号の「ユリイカ」を手に取ると、なんと特集は「J−コミック97」だって。売れまくった96年8月号「ジャパニメーション!」のエヴァ特集で、おたく相手の商売の味をしめたか?と思ったが、中身を見ると、そんな穿った憶測を吹き飛ばすぐらい、その人選がシブい。対談がよしもとよしとも×古屋兎丸、そしてインタビューが山本直樹、町野変丸、南Q太、業田良家などなど。インタビューアーも、楳図かずおに岸野雄一だったり、安野モヨコに至っては伏見憲明&斎藤綾子(!)というスキモノにはたまらないヒネった人選。やるなぁ。惜しみなく対価を払って購入、そして導入されたばかりの消費税UPを初めて実感したのだった。